第39話

トイレから戻ってくると、女の子がひとり保健室のソファに座っていた。

「あ、あの、占ってほしいんだけど……」

その子は,すごく真面目そうな印象を受ける。

銀縁メガネにシャツの第一ボタンもきっちりとめて校則を忠実に守っている着こなし。

頬が赤く,いかにも男の子慣れしていなさそう。

「あ、ありがとう。じゃあ、占ってみるね!」

机にタロットクロスを敷く。

「何か悩み事があるの?」

「え、と、親と折り合いが悪くて、いつもケンカしちゃうんです」

「うんうん」

「いつも小テストで満点取ってて、たまに95点だと鬼みたいに怒鳴ってきて……」

「そうなんだ」

「親は……私のこと自分の自慢のネタにしたいだけなんじゃないかなって」

「それを占えばいいんだね」

「はい」

「ちょっと待ってね。」

タロットを右回りに混ぜて、ひとまとめにしてから、さらに3つに分ける。

「この三つの山をあなたの好きな順番で一つに重ねてみて」

「はい」

彼女は左、右、真ん中の順番で一つの山にまとめた。

上から7枚目を一枚引く。

出たのは、星のカード

「多分ね、あなたの親はあなたに期待しすぎてる」

「私に期待?」

「それが空回りしちゃって、ついつい厳しくなってしまうみたい。このカードは希望って意味。多分なんだけど,自分のできないことをあなたに託しているみたいだよ」

「希望を託す……そうなんだ」

「あなたは親の期待に応えたいの?」

「私は、……わからない。どうしていいのかわかんないや」

「親に自分の気持ちをぶつけてみなよ。ちょっと喧嘩した方がいいよ」

「うーん……ちょっとよくわかんないや」

そう言いながら、あの子は保健室から出て行った。

若干のショックを覚えた。

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