第29話

引きずりながらボクを人気のない神社まで引っ張っていってくれた。

なんだろう。このこといると落ち着く。

触れた体から安心感を感じる。

この感覚は何なのかはわからない。

ああ、この子なんだ……という感じ。

「大丈夫?」

「ちょっとくらっとしただけだから」

「何か飲み物買ってくるね!待ってて!」


しばらくして、ドリンクを持って来てくれた。

「口開けて」

優しくストローをくわえさせてくれた。

「焦らずにゆっくりでいいからね」

ちゅうちゅうとストローを吸う。

女の子は片手でボクの肩を抱き、もう片方の手でドリンクを支えている。

密着した体は温かく。心がほぐれていく感じがした。

「大丈夫?」

「うん」

少し話をした後、キスをした。

「お姉さん、『またね』」

と言い、お姉さんから離れた。

名前も年齢も知らない。

出会い系サイトと同じ状況。

だげど、あの人たちとは違う。

お姉さんは特別な人。

多分生まれる前から出会う運命だったような。

そんな人。

だから、また出会えるような気がする。

お姉さん『またね』

どんな嫌なことがあっても、きっとお姉さんとまた出会えることを糧に生きていこう。

一瞬だけの出会いだったけど、この瞬間は永遠なんだ。


***


「占いの修行?」

「そう。師匠についてもらって占いの修行をしなさい。もう人は決まっているから」

うちがそういう家系というのは知っている。

こんな早いうちから修行が始まるのか。

「じゃあ、来週土曜日からここに行ってね」

と、紙を渡された。

島にフェリーで行かなければならないらしい。

紙には

⚪︎×島の母 海江麗憲

と書かれていた。どう読むかわからない、男か女かもわからない。

不安しかない。




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