第30話

土曜日。

フェリーから降りると、お迎えの人がもう来ていた。

「求村陽司くんだね?」

「はい」

若い女の子がペコリと頭を下げた。

「海江の娘のサトコです。よろしくね」

「よ、よろしくお願いします」

サトコさんの車に乗り、山奥まで連れて行かれる。

小さな民宿の前で車が止まった。

二階建てで、和と洋をミックスした感じの白亜の古民家。十二星座のステンドグラスが太陽の光を反射してキラキラ光る。

そこの前には畑があり、夏野菜が大量に植えられていた。

ゴーヤに、トマトにきゅうり、大葉、ネギ。

森みたいになっている野菜の苗がガサゴソ!と揺れた。

「?!」

しばらくして出て来たのはモンペにTシャツ、頭にはほっかむりをした、肉感的な妙齢の女性。

一見若そうに見えるが、年齢が全くわからない。

「あら、もうそげな時間かね。ワシは海江レイケン。よろしく。あーたは……あー、名前なんだっけか?まあいいか!今日からあなたはマンガのお姫さんみたいな格好してるから、姫男ちゃんね!よろしく」

何というネーミングセンスの無さ!

ってか、これから弟子になる人の名前くらい覚えてよ。

「今日からお世話になります。もとむ……」

「堅苦しい挨拶はええよ。そんなエライせんせいちゃうしのう。まあ、たのしくお気張りなさい」

「は、はい!」

「可愛いのう。ワシも姫男ちゃんみたいな孫が欲しいわ。さて……中に入んな。はじめるけぇ」




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