第6話かわいいひと

きゅうちゃんは私の隣に座る。

「白湯ラーメン、お豆腐で!」

すぐに運ばれてきた白湯スープの湯豆腐をきゅうちゃんはちびちびと食べる。

「おそろいだね」

と言い、彼女は首を傾げてうふ。と笑う。

つられてわたしもうふふと顔がほころぶ。

可愛い。可愛すぎる。ウォーアイニー!

ってか、せっかくここで会ったんだから自己紹介しなきゃ!ラインも交換しなきゃ!

勇気を出さなきゃ!ここで何もなかったら、二度とないかもしれない。

頑張れ!私!勇気を出せ!

チャンスは逃すともうないぞ!

「あ、あのっ……!」

「なあにー」

「私、月子って言います。さっき、バーでお会いしましたよね」

「そうだっけ?覚えてないや。ごめん」

頭の上に5トンのおもりが乗るくらいの衝撃を受けた。

そっか、そうだよね。

私は彼女にとって十把一絡げの存在でしかない。

そんなもんか。

「変なこと聞いちゃってごめん。今の忘れて」

このまま、私ごと忘れてください。その方が楽。

「えー?なんでー?」

「なんでもです」

「こんなに可愛いひと、忘れるわけないじゃん」

「でも、バーで会った時は忘れてたじゃん!」

「そうだっけ?」

「もー!私がバカみたいじゃん。勝手に舞い上がっちゃってさ」

「ごめんごめん。あは」

「もう!」

ひとしきり笑ったあと、きゅうちゃんは改めて私に向き直ると、

「私、きゅうちゃんって呼ばれてるの。仲良くしてね。月子ちゃん」

うるうるした目で見つめられて、ドキドキしてしまう。

「はい。よろしくお願いします」

「きゅうにまじめになったね」

ラーメンスープの湯豆腐を2人同時に食べる。

美味しい。今度は味がする。

でも、さっき……私のこと、可愛いって言ってくれた!

それをいうあなたが可愛いよ!

今までそんなこと言われたことが無かったから。むずがゆさを覚える。

可愛いという言葉が頭の中でぐるぐると回っている。

「どうしたの?熱でもある?」


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