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「かのんちゃん。」

俺はチャンスだと思い、そう言って、ギュっとかのんちゃんを抱きしめようとした。

すると、

「お兄ちゃん、お姉ちゃん、こんな所で何してるの?」

と、直ぐ横から声が聞こえた。

声の方を見ると、そこに小学6年生位の男の子が、右手に懐中電灯を、左手に塾の鞄を持って、俺達を見ながら立って居た。


くぅ~~っ、お前もか、ブルータス。

と思いながら、

「さっき、そこで幽霊と出会ってね。

急いで逃げて来たんだ。」

と、男の子を見ながら言った。

すると、男の子は少し青い顔をして、

「お寺のお墓さんの所だよね。

あそこ、男の人の幽霊が出るって、有名なんだ。

ぼくも、時々、見かけるんだ。」

少し、怖そうな顔をして言った。


「ねぇ、キミ。

この道を真っ直ぐ行ったら、何処かに出られるかな?

お寺の方は、怖くって、戻りたく無いの。」

かのんちゃんが、男の子を見ながら聞いた。

「うん、出られるよ。

少し先で、広い道路に出るんだ。

ぼくも、今からそっちへ行くから、案内してあげるよ。」

男の子は嬉しそうに言うと、歩き出した。


その道を5分程歩くと、少し交通量の多い、広い道へ出た。

そこは、俺がいつも利用している通学路の近くだった。

「ありがとう、助かったよ。」

男の子を見ながら言った。

「ホントに、ありがとう。」

かのんちゃんも、笑顔で男の子に礼を言った。

「ううん、良いよ。

それじゃ、ぼく、ここでお母さんが車で迎えに来るのを待つから。

お兄ちゃん、お姉ちゃん、気を付けてね。」

そう言うと、男の子は笑顔で手を振ってくれた。


「でも、本物の幽霊と出会うなんて、ビックリだね。」

かのんちゃんは、俺の腕につかまり、笑顔で言った。

「ああ、まさか、まさか、だな。

でも、まあ、良い事もあったから、それも良いかな。」

「良い事って?」

「うん、まあ、また、後で話すよ。」

「そう。。。

リュウスケさん、今日は、ありがとうございました。」

かのんちゃんは、そう言うと、俺の腕から離れて、ペコリと頭を下げた。

「いやいや、良いよ。

おれも、かのんちゃんが居てくれたから・・・、とても嬉しかったよ。」

俺も笑顔で言った。


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