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「ありがとう、かのんちゃん。

かのんちゃんは、気が利くね。」

「いえ、これ位、普通は気付く筈ですけど。」

「そっ、そうだね、ハハハハハ。」

「あの、少し、向こうを向いててくれませんか?」

「うん、良いけど。。。」

そう言って、俺は言われた通り、お寺の境内の方を向いて、かのんちゃんに背を向けた。

かのんちゃんは、虫よけスプレーを体に吹き掛けているらしく、プシューという音が聞こえて来た。


「ありがとうございます。

もう、大丈夫ですよ。」

かのんちゃんの声を聞いて振り向くと、かのんちゃんは、赤い顔をして恥ずかしそうにしていた。

「虫よけスプレー、振り掛けてたの?」

「ええ。

今日はスカートで来たから、それで。。。」

「藪蚊が多い所に、スカートで来たんだ。」

俺は何も考えずに言った。

そして、直ぐにしまったと思った。

「本当はズボンで来るつもりだったんです。

でも、折角だから、前に足が綺麗だって言われたから、スカートにしたんです。」

かのんちゃんは、真っ赤な顔で、ムッとして言った。


その一言は、とてもショックだった。

まるで試合終了間際に、逆転のロングスリーポイントを決められたようだった。

つまり、かのんちゃんは、今日の肝試し参加者の中に、意中の人が居たと言う事だ。

ただ、それがゴウタで無い事だけは、確実だ。

もしゴウタが かのんちゃんの意中の人だったりしたら、世界は明日、確実に終わる。

俺の全身全霊が、そう教えていた。

そして俺の直観は、今日の肝試し参加者の中で、最もイケメンである、隣のクラスのナオユキだと教えていた。

ナオユキは2年の中でも、1,2位を争うくらいに、女子にモテているのだ。


「かのんちゃん、ゴメン。

本当に、ゴメンね。

そんなつもりで、言ったんじゃないんだ。」

俺は両手を合わせ、頭を下げて、かのんちゃんに、平謝りに謝った。

墓場でこんな事してたら、勘違いされそうだが、そうする事しか、俺には思いつかなかった。

「もっ、もう、良いですよ。

それより、行きましょう。」

かのんちゃんは恥ずかしそうに言うと、照れを隠すように、俺の手をギュっと握った。


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