第5話 スライム令嬢は魔王と〇〇する!?

「サーラに何をした!」

 ロバート様が魔王カミラに剣で斬りかかる。

「ロバート、貴方は騙されていたのよ。このサーラという女は人間じゃないの。本性はスライムなのよ。」

「嘘だ!」

 彼はやけくそになって斬りかかるが全てかわされている。


 私は人化の術を発動させて人間の姿に戻ろうとするけれども、上手くいかなかった。

 魔王カミラに魔力と生命力を吸い取られて術が発動しないのである。

(どうすればいいのかしら……)


 ロバート様はむちゃくちゃに剣を振り回している。

 魔王カミラは苛ついた顔になってきた。

「少し怪我をさせて大人しくなってもらおうかしら」

 彼女が手を振ると無数のコウモリが出現してロバート様に襲いかかった。

 超音波を発しながら鋭い牙で彼の身体を切り刻んでいく。


「ぐぅ……」

 ロバート様は血を流してしゃがみ込んだ。

「ヒーリングレイン!」

 私はスライムの回復スキルを使った。

 霧状の癒やしのミストがロバート様に降り注ぐ。

 みるみるうちに傷が癒えていった。


「サーラ、君は癒やしの力が使えるのか? やっぱり聖女だ……」

 ロバート様が感嘆した声を出す。

「魔王カミラ、お前は悪役令嬢だ! 成敗してやる!」

 ロバート様が素早い動きで剣を突き出した。

 魔王カミラの胸に突き刺さる。

「一度は斬られて上げようと思ったけど、心臓を貫くなんて、そんなに私のことが嫌い?」

 魔王カミラは心臓を貫かれても平然としているようにみえる。


「たとえ時間を巻き戻したとしても、お前を愛することはないだろう」

 ロバート様はグリッと剣をえぐった。

「生まれた時から許婚者で、夢でずっと逢いに行ってたのに……」

 魔王カミラは囁くように呟いた。

「それが俺を苦しめていたんだ」

 彼が剣をズブっと深く刺すと背中から突き抜けた。

 剣の先にはドクンドクンと脈打つ心臓が突き刺さっている。

「私には心臓が三つあるから、一つ失っても死にはしないわ」

 彼女は不敵に笑った。


「魔王の私を悪役令嬢と呼んで断罪するなんて……恋い焦がれた人に拒絶されるのは堪えるわ」

「お前が侵略してきたせいで、この王国の人間が大勢死んだんだ」

「全てロバート、貴方が欲しかったからよ……」

 魔王カミラは顔を歪めて泣きそうになっている。


「俺はお前と結婚しない。俺はサーラを愛している」

「でも、サーラはスライムなのよ……」

「それでもいい。俺はサーラと出会って心が救われたんだ。サーラ以外の女は愛せない」


 私はこんなときなのに顔が赤く火照ってきた。

 こうなったらアレをやるしかないわ。

 私は伸び上がって魔王カミラを捕食した。

 スライムボディが彼女を覆い隠して飲み込んでしまう。

 彼女はしばらくもがいていたが、身体を溶かされてスライムボディに吸収されてしまった。


 その途端に私の能力値が爆上がりした。


・名前 サーラ・ミュゼ・ラウンドハート

・年齢 16歳

・ジョブ スライム使い

・種族 エルダースライム

・体力度    2200/2500

・知力度    4000/4000

・器用度    2000/2000

・敏捷度    2800/2800

・魅力度    1500/1500

・幸運度    1800/1800


 種族もただのスライムからエルダースライムに進化している。

 私は魔力を集中させて人化の術を使った。

 すぐにスライムボディが変化して人間の姿になる。

 魅力度が爆上がりしているので元の清楚な雰囲気に妖艶さが加わっている。

 女として数段グレードアップした魅力的な姿だった。


「サーラ……無事かい?」

 ロバート様が近づいてきて抱きしめられた。

「ロバート様、これで良かったと思います。私の中には魔王カミラもいるから……」

 私の意識の中には魔王カミラが消えずに残っていた。

「サーラを娶るなら、私も付いて来るということよ……」

 私は魔王カミラのように妖艶に笑った。


 魔王カミラを吸収した私は、魔王のスキルが使えるようになっていた。

 魔王軍の四天王をしばき倒して忠誠を誓わせると、軍を引かせて停戦する。

 それらは私の中で生きている魔王カミラがやってくれた。


 ラウンドハート伯爵家に戻ると魔王のスキルで私を虐待していた人たちを精神支配した。

 私の中の魔王カミラは殺したがっていたけど、サーラの意識が邪魔をしたのだ。

 父親のヘンドリックも魔王軍との戦争が終わったので戻ってきていた。


 ロバート公爵と婚約する報告をする。

 ヘンドリックは急な話で驚いていたが、了承してくれた。

 何もかも上手くいくようになったので怖いくらいだった。


 私の中にはサーラの他に魔王カミラの意識も混在しているのである。

 だから、ロバートと結婚したら魔王カミラもついてくる。

 一夫多妻制みたいなものである。


 私は時々、請われて教会でスライムの癒やしの力を使っていた。

 怪我や病気の人達を癒やしていたのだ。

 いつの間にか、“水の聖女”と呼ばれるようになっていた。


 魔王と聖女が混在している私だったが、ロバートは全てを受け入れてくれて愛してくれるので幸せだった。


 私たちは一年後に結婚式を挙げた。

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スライム令嬢は公爵様に拾われて幸せなので魔王には負けません 華咲 美月 @tomomikahara24

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