11
ゴゼンが街の見回りしているときに、突然空からモンスターが現れた。
彼女はそのときに、そのモンスターがデスゲイズと名乗ったと皆に伝える。
「デスゲイズだってッ!?」
「なにそのデスゲイズって? 有名なの?」
「知らないの!? デスゲイズっていったら太古に封印された伝説のモンスターだよ!」
モンスターの名を聞き、驚愕の声をあげたピュリーは、小首を傾げているレネに説明を始めた。
デスゲイズとは、さまざまな悲劇をもたらす死を
そんな伝説のモンスターが、どうしてこの平和なブルーム王国に現れたのだと、彼女を含め、デスゲイズの名を知るロニーも驚きを隠せずにいた。
「でもよく倒せたね、ゴゼン。そんな伝説のモンスターをたった一人で」
「当然だ。と、言いたいところだが、奴は何かを探していた様子だった。少し私と戦ってからすぐに逃げていってしまったんだ」
「それでも大したもんだよ。さすがはブルーム王国の守護者。頼りになる美人サムライ。ワタシも恋人として鼻が高いよ~」
軽口を吐いたロニーを無視して、ゴゼンは話を続けた。
何度か剣を合わせたが、自分一人ではデスゲイズに敵わなかっただろうと。
相手が逃げてくれたのは幸運だったと、自分の不甲斐なさに表情を歪めている。
「でも、無事に追い払ったんだから、そんなに落ち込まないでよ。次に来たらみんなで倒せばいいじゃない」
「そうそう。こっちには最強の女サムライに、無敵の掃除屋さんフィガロ姉妹。それに最高の大冒険家がいるんだ。ボクたち四人がいれば負けっこないよ」
「簡単にいってくれるな。だが、おまえたちがそういうと本当に可能そうだから不思議だよ」
レネとピュリーの言葉を聞いたゴゼンは、呆れながらも笑みを浮かべていた。
それは二人の言う通り――。
この四人ならばたとえどんなモンスターが現れようとも負けはしないと、ゴゼン自身も思っているのだ。
数年前に正体不明の幻獣と戦った自分たちならば、たとえ相手が伝説のモンスターだとしても必ず勝てると。
「じゃあ、次はボクが調べたことを話すよ」
ゴゼンの話が終わると、次にモンスターのことを調べていたピュリーが口を開いた。
彼女はモンスターが現れたという街のあらゆる場所へ足を運び、そこであるものを見つけたそうだ。
「そのあるものってなに?」
「それはね。魔力の
訊ねたレネはそんなことかと思った。
以前仕事でいった屋敷のモンスターは魔法を使っていたのだ。
魔力の痕跡くらい残っているだろうと、彼女が肩透かしを食らったような態度でいると、ピュリーは言葉を続ける。
「そんなの当たり前だと思ってるんだろ? でも違うんだよ。その痕跡はボクらがよく知っているものだったんだ」
ピュリーは幼い頃から国を出て、様々な場所へと旅に出ている。
そのため、古い遺跡に残った古文書から魔法の知識を得ており、魔力の痕跡には傾向があることを理解しているのだ。
街中にあった魔力の痕跡には、もちろんモンスターのものもあったが、その多くが彼女のいう四人のよく知るもの――。
数年前にブルーム王国を襲った正体不明の幻獣のものだったと、ピュリーは言う。
「それは本当なのかピュリーッ!? 何かの間違いでは!?」
「間違いないよ。あれだけ瘴気を漂わせる痕跡なんて、ボクは他に知らないからね」
「それが事実だとすると、またあの惨劇が起こるぞ……」
ゴゼンの表情が沈んだものへと変わっていく。
それは話を聞いていたロニーとレネも同じで、部屋の雰囲気が一気に暗いものへと変わっていった。
ピュリーの話を信じるならば、またしても正体不明の幻獣が現れたということになる。
さらに彼女の推測によると、その魔力の痕跡、または幻獣の持つ力に、モンスターたちが引き寄せられているのではないかと思っているようだ。
今はまだいい。
以前にフィガロ姉妹が戦った、女性の絵画に取りついたモンスター程度ならば退治することもできる。
対応方法を教えれば、国の兵たちでもなんとかできるだろう。
だが、デスゲイズや元凶ともいえる正体不明の幻獣のような強力なモンスターが一斉に現れたら、いくら彼女たちでも勝てはしないだろう。
そうなったらブルーム王国は終わりだ。
魔法は今や失われた力なのだ。
もちろん世界にはまだ見ぬ超常的な力を持つ者もいるだろうが(レネやゴゼンなどもそうだ)。
現時点では、そんな者たちに助けを求めることなど不可能である。
「これは、一刻も早く幻獣を捕まえないとだね」
「ああ、私は一度城に戻る。このことをブルーム王へ知らせねばならないからな」
皆が黙る中でロニーが口を開くと、ゴゼンは椅子から立ち上がった。
それから早足でその場から去っていこうとする彼女に、レネが慌てて声をかける。
「ちょっと待ってゴゼン! この子のことで相談があるんだけど! あとピュリーにも協力してほしくて!」
ゴゼンが足を止め、ピュリーがレネのほうを向いた。
だが、次の瞬間には彼女たちの視線は別の人物のほうへと移っていた。
それは、ソファーで寝ていた幼女がいつの間にか起き上がっていたからだった。
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