彼女の父親
大学のカフェテリアで、彼女の晴美は智晴のレポートを写していた。
「丸写しになるとばれるから、途中の考察のところはこっちに変えて、結論の言い回しも変えよう。」
智晴が教えた通りに、晴美はレポートを修正していった。正直、レポートを2本書いているようなものなので疲れるが、
「ありがとう。ノートもわかりやすくまとめてくれて助かる。これで来週のテストも乗り切れそう。」
晴美が笑顔でお礼を言ってくれるのを見ると、その苦労も癒されるので良しとしている。
「このあと、智晴の家に行ってもいい?」
レポートを書きながら、晴美が聞いてきた。
「ボロいアパートだし、部屋も汚いからダメだよ。」
アパートがボロいのは確かだが、部屋の中はパパ活のためのスカートやメイク用品など女装道具で溢れかえっているので、晴美を部屋には入れる訳にはいかない。本当は人目のつかない部屋の中ででイチャつきたい欲望もあるが、大学に通うためにはパパ活は辞められないので仕方ないと諦めている。
「じゃレポート終わったら、あそこのカフェ行こうよ。」
晴美は大学近くのカフェに誘ってきた。
「いいよ。」
智晴が応じると、
「バイト稼げるみたいだね。昔だったから、お金ないから無理って言ってたのに。」
「いつも晴美に奢ってもらってばかりだと、情けなくなるからデート代ぐらいは稼ぐために頑張ってるよ。」
11月に始めたパパ活は、1月になった今では順調に月に一回呼んでくれるリピーターが5人、それ以外にも単発で月に2〜3回は入っている。一回で五千円から一万円貰えて、ご飯が食べられて、場合によっては服やアクセサリーも買って貰えるので、出費は減って収入は増えるの理想的な展開で生活はかなり楽になった。
パパ活して気づいたが、相手の男性は仕事は順調だが、家庭は上手くなっていない人が多い。会社内で出世はしていても、その分家族サービスが不足して家庭に居場所がないみたいだ。
同じ女性相手に食事やお酒を楽しむなら、キャバクラやクラブなど夜のお店もあるが、パパ活を選んでいるのは失った家庭の温もりを求めているような感じがする。それに気づいてから、理想の娘を演じるようになり、実際リピーターも増えてきた。目の前にいる晴美の父親もリピーターの一人だ。
以前晴美に父親との関係をそれとなく聞いてみたが、中学生以降はあまり話していないらしい。
レポートも終わってカフェに移動して、智晴はカフェオレ、晴美はカフェラテを注文した。
「智晴、カフェラテとカフェオレの違いって何?」
「牛乳で割るのが普通のコーヒーかエスプレッソかの違い。カフェラテの方が少し苦いだろ。」
「へー、そうなんだ。智晴って物知り。」
そんな会話をしながら晴美の服装を見てみる。ダッフルコートの下はいつものジーンズに黒のタートルネックのセーターと、いつもどおり女の子っぽくないファッションだ。
「晴美って、スカート履かないの?最近見ないけど。」
「大学に入った頃は履いてたけど、スカートだといろいろ面倒だし、一度履かなくなると履かなくなるね。やっぱり彼女にはスカート履いてほしいの?」
確かにスカートだと活動的な晴美には動きづらそうだし、冬場は寒いしで履かないのになれると、戻るのは難しいのかもしれない。
「晴美はかわいいのに、あんまりかわいい格好しないなと思って。」
「かわいい系の服は、多分似合わないよ。智晴の方が似合うかも。今度女装してみる?」
そう言いながら、自分のカフェラテと智晴のカフェオレを一口ずつ飲んで、
「やっぱりカフェラテのほうが少し苦いね。」
屈託のない笑顔を見せた。
その夜は、父親の聖一とのパパ活の約束が入っていた。前回デートした時は、今度は寿司でも食べようと言われていたので、醤油がはねても目立たない黒のニットとピンクのロングスカートのコーデにしてみた。
お寿司屋さんに入り、カウンター席に二人並んで座る。左に座っている聖一さんのお猪口に日本酒をお酌したところで、智晴はお茶で乾杯した。
「今日も美味しいごはんありがとうございます。」
「ここは何でもおいしいから好きなものをお食べ。」
「ところで、この前大学で娘さん見ましたよ。かわいいですね。」
「いや~。あんまり女の子らしくないし、智ちゃんがうちの娘だったらよかったのに。」
そう言いながら、聖一は右手を伸ばして智晴の腰を触り始めた。そしてその手は少しずつ下に移動してお尻をなでている。聖一は酔うとボディタッチを求めてくる。胸なら男であることがバレるのでダメだが、そのぶんお尻までなら許すことにしている。
晴美、今君の父親は男のお尻を触って喜んでいるぞ。
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