第4話 将来のはなし
春翔と瑠花は付き合って3年が過ぎた。
その頃から春翔は瑠花と一緒に歩む未来を描いていた。
アルバイトを辞めた後の自分の将来の事や2人のこれからをどうして行こうか話し合うタイミングを探していた。
瑠花はヨガのインストラクターになりたいと前々から話していた。明確な目標を持ち夢をハッキリと口にできる瑠花のそんなところも春翔は好きだった。
それなのに
春翔には何も無かった。
胸を張って語れる夢も
ワクワクする様な明日も...
それが春翔を少し不安にさせた。
高校を卒業して直ぐに春翔は故郷を飛び出した。これといった答えを東京に持ち合わせていなかったが、地元にいては駄目な気がした。
ただそれだけで春翔は東京に存在していた。
それでも春翔は生きるのが精一杯で、時間はあっと言う間に過ぎていた。
ある日、瑠花とバイト終わりに買い物をしていると咲希から連絡があった。バイト終わりに咲希が合流する事は珍しく無く3人で時間を過ごす事は今まではよくある事だった。
だけどその日は少し様子が違った。
瑠花のテンションが電話をしながら下がっていくのが分かった。
瑠花は「合流したら別行動にしよう?...それならいいけど....」そう言って電話を切ると春翔を見つめ「はぁー...」とため息を吐いた。
瑠花は人見知りをするところがあった。
友達といる時はとても活発なのだが知らない人が空間に加わると先ず口数が激減するのだ。
カラオケで歌っている最中に店員がドリンクを運んでくると楽曲の途中であろうが音楽を止めてデンモクを見つめる。沈黙でやり過ごすタイプらしい。春翔はそっちの方が気まずいのでは無いかと毎回思っていた。
でもそのおかげで春翔は初対面で誰とでも話せるようになった。
咲希とは別行動になるという事で改めて2人で散歩するコースを話し合っていると咲希が瑠花を呼ぶ声がした。
瑠花は近づいて来た咲希に目を移すと、いつも通りには手を振らず小さく咲希にお辞儀をした。
正確には咲希の隣に居る男に会釈をしていた。
それが春翔と悠也の初めての出逢いだった。
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