第2話 エスプレッソ
10年前、
閉店間際に来店した春翔にマスターが「あと15分で閉店ですが宜しいですか?」そう尋ねた。
「はい、コーヒーを一杯だけですので」春翔はそう答えた。
特に嫌な空気になる事も無くお互いが着地していた。それでも素早くカウンターへ座るとどこかで遠慮していたのかエスプレッソを頼んだ。
マスターの淹れたエスプレッソを5分で啜り飲んで会計を済ませると、その後5分程は店内を流れるJAZZを聴きながら止まった時間に身を置いた。
15分はとても長く感じ
そのうちの5分は「この世界には自分しか存在しない」そんな錯覚に落ちた。
そして
春翔の中で何かが動き出した気がした。
今日10年振りに春翔がこの店に来たのは
「ここへ来れば何かが変わる」そんな気がしたからだった。
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