彼女のご飯が美味しすぎるがしかし

第ゼロ話 若さゆえに青い、青いゆえに危険（解答編）

　よぉ、俺が誰かって？　俺だよ俺！

　あいつの元カレ、と言えば伝わるか？

　死んじまって、今じゃあいつに憑いてることが生きがいの俺よ。まっ死んでるのに生きがいってのも変な話しだがなっ！！

　ふぅ。さて、本題はこっからだ。

　じゃがいも料理をおいしそうに食った後に苦しんでたろ？

　原因？　おぅ！　見てたぜ？　まるっと半分くらいなっ！！

　仕方ねぇだろ、こっちにも色々あんだよっ！

　もちろん、なんで苦しんでたか、そのワケ、聞いてくんだろ？

　オーライ、語ってやろう！

　何があったかの全貌を。

（遡る事、今カレが運ばれる数時間前）

「ただいま♪」

　お、帰ってきやがった。憑いていきたかったが、今日はいつもより早い時間の外出で油断したぜ。

　にしても、誰もいない部屋に声をかけるくせ、相変わらず可愛いぜ。聞こえないと分かっていても、思わず返事しちまいそうになっちまう。

　両手に買い物袋を持って、さっそくキッチンに引っ込んでったな。

「今日は、ちちの家庭菜園から拝借してきたじゃがいも♪　わざわざいつもより買い物に行く時間を早くして、じゃがいも採ってくるの頑張ったんだから、たくさん褒めてもらいたいな♪」

　お、あのビニール袋の中はじゃがいもか。

　まてよっ、ってことはじゃがいもの芽が今カレを襲うんじゃねぇか？！

　くっくっく、自分が食うのはごめんだが、見てる分には最高なんだよなっ！

「さて、じゃがいもの芽を取っちゃわないと♪　いっぱいあるからって、見落とさずに全部チェックしちゃわないと♪」

　おや？

　じゃがいもの芽のことは知ってる？

　なんだつまんねぇ。今日は食あたりイベントなしかよ。

　俺も生前味わった苦しみを共有できるって疑似体験は、マジ娯楽なのによ……ってあれ？

　じゃがいも小さくね？

　つーか所々、緑じゃね？

　しかも結構ありそうじゃね？

　はいキタ－－－－－－－！！！！

　逆転満塁ホームラン！！！

　いや、ホームランってよりもアウトってほうが正しいのか（笑。

　そうかそうか、市販じゃなくて家庭菜園から取ってきたって、自分ひとりで引っこ抜いてきたのか。だわな、畑やってる人と一緒だったら、あんな小さくて青いの、危なくて渡さねーわな。

　小さいじゃがいもの緑になってるとこは、じゃがいもの芽と同じ成分。そこまでは知らなかったらしいな。

「芽のチェック完了～♪　煮込んで芋煮にするぞ～♪」

　いや、毒を煮詰めて濃度あげてるだけなんだがなっ！

「芋煮完成～♪　今度は油で揚げて、みそかんぷら♪　一口サイズで食べやすそうなの選んできて正解かも♪」

　不正解なんだよなぁ～、残念っ！！（笑

「さっ、料理の支度完了♪　早く帰ってこっないかな～♪」

　彼の帰りを今か今かと待つ彼女はいじらしいが、なんつうか、先の展開が読めてる人が見ると、笑顔で殺害予告してるように見えてやべぇんだが（笑。

　まっ、今カレはご愁傷様、最後まで見届けてやるかねぇ。