第壱話 報告連絡相談(食事編)

(がちゃ)

「ただいま~、いや~会社で怒られちゃって参ったよ。ほうれんそうを怠るなってさ」

「おかえり♪ あ、そしたら今日の夕飯はピッタリかも♪」

 家に帰ると、彼女が元気に出迎えてくれた。

 今日の夕飯、今度はどんな料理なんだろ。

「え、ピッタリな夕飯? なんだろ、ほうれん草使ってる、とか?」

「ピンポンピンポンピンポン~♪ 大正解~♪」

 ほうれん草、いいね。好物ってほど好きなわけじゃないけど、別に嫌いというわけでもない。普通に好き。

「じゃ、夕飯にするね♪」


「いただきます!」

「いただきます♪」

(もぐもぐもぐ……)

「え、おいしっ?! というか、ほうれん草ってこんな甘い?!」

「ふっふっふー♪ 採れたて新鮮の力は偉大なのだよ♪」

 胸を張って誇らしげな彼女はとても可愛かった。

「味付けもばっちりだし、こんなにみずみずしいほうれん草を食べたの初めてかも!」

「でしょ♪ ほうれん草って実はすっごくおいしいんだよ♪」

 ほうれん草の料理はおいしい。おいしいが、また食中毒になるんじゃない?

 こっわ!

 でもほうれん草で食中毒って聞かないし、たぶん大丈夫。水仙とじゃがいもで俺は学んだ。うん、きっとだいじょうぶ!

「ふぅ、ごちそうさま!」

「ごちそうさま♪」


(数時間後)


「いや~夕飯おいしかったな~!」

 まだ倒れず体調も悪くない!

 奇跡!

「あ、ほんと? ほうれん草のやつ、気に入った? じゃ、また作ってあげるね♪」

「ほんと? うれしい!」

「そんな喜んでくれるなんて珍しいね♪ 定番メニューにしちゃおうかな♪」


(数日後)

「痛たたたたたたっ!」

 痛い、痛すぎる!

「え、どうしたの?!」

「な、なんか関節が、痛いっ!」

「大丈夫?」

「だだだだだ、だいじょばない!! ちょ、これなに?! 痛風?! きっつっ、手足の先に針を入れられたのかってくらい痛い!!!!」

 うずくまって、痛みに耐える。

 遠くで救急車のサイレンの音がする。

 ああ、またいつものか。

 今度はどこで間違った。

 わからない。


「え、また私、何かしちゃいました?」

 痛くて動けない。声を出しても痛む。

 痛みで遠のく意識の中、彼女の声も遠のいていく。

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