第イチ話 警戒、そして安心、からの……(食事編)
(ガチャ)
「ただいま~、ふぅ疲れた~」
「おかえり♪」
疲れて帰宅した俺を、彼女はあたたかい笑顔で迎えてくれた。
「今日も疲れた~、夕飯にしたいけど平気?」
「うん、準備できてるからいつでもいいよ♪」
さっと自室で着替えを済ませると、食卓に。彼女の飯の味は絶品だ。空腹にお腹が鳴りそうになりながら、自分の席につくとすでにテーブルには料理が用意されていた。
「ありがとう~。今日もおいしそうだね! どんな料理か聞いていい?」
「こっちは芋煮♪ じゃがいもの入った豚汁みたいな感じかな?」
見ると、お椀においしそうに湯気をあげている汁物があり、食欲をそそられる。
「で、こっちはみそかんぷら♪ 福島の郷土料理だよ♪ 味噌、みりん、砂糖なんかで味付けした料理で、油で揚げてあるよ♪」
「へ~、はじめて聞いたかも、みそかんぷら。おいしそうだね! コロコロしたじゃがいもが使われてるんだね」
「たくさんじゃがいもを採ってきたからね♪ お父さんが家庭菜園してる所があって、そこから好きなだけ持ってっていいよって言われてるから♪」
「そうか、そしたら今度お礼をしに伺わせてもらおうかな~。……ん? じゃがいも?」
嫌な予感がする。先日、食中毒で運ばれたばかりの俺の第六感が危険だと告げている!
「ねぇ、このじゃがいもさ、芽ってどうした?」
そう、じゃがいもの芽には毒がある。彼女×じゃがいも=毒。この公式はやばい。が、そう何度も救急搬送される俺じゃない。事前確認することで危機を回避だ。
「じゃがいもの芽はもちろん取ったよ♪ 小さいじゃがいもが多かったから、芽が出てないのも多かったけど、それでもちゃんと1個1個見て外していったんだからね?」
じゃがいもの芽には毒があるという事は知っていたか。なら大丈夫か。
「そかそか、ありがとう。そしたら早速いただこうか! いただきます!」
「いただきます♪」
(ん……もぐもぐ)
「う、…………うまいっ!! みそかんぷらはホクホクとしてて、皮ごと使われてるのもあってワイルドだけど味はすごい丁寧な味付けがされている!! そして、こっちの芋煮!! 芋煮というだけあって、芋がしっかりと形を残していつつ、それでも柔らかく調理されてる! 歯が抵抗なくじゃがいもを噛み切ると、スープのうまみと野菜の甘味が口の中を支配してくる!!」
(んぐ、もぐもぐ)
「おそまつさま♪」
「ごちそうさまでした!」
「ごちそうさまでした♪」
「いや~、おいしかった。じゃがいもが使われてるって言われた時はちょっと心配したけど、気にしすぎだtt……あれ?」
「ん? どうしたの?」
「いや、なんか、体の調子が……」
(バタッ!)
俺は腹痛とめまいに膝をつきながら、崩れ落ちた。遠くで救急車のサイレンの音が鳴るのを聞きながら、あ、これ最近も経験したやつだ、とちょっと笑い事じゃないのに笑みがこぼれる。
え、また?
そう思った。
ちゃんと、警戒したのに。
また避けれなかった。
「あれ? また私、やっちゃいました?」
そんな彼女の声を最後に耳にし、俺は意識を失った。
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