第二十八夜 振り向くな
これは私のおばぁから聞いた実話です。
私のおばぁはとある田舎で育ちました。
その田舎には大きな野原があり、その野原の真ん中を人が一人通れる程の一本道が100メートルほどに渡り続く道があったそうです。
前から人がやって来ると、どちらかが待たないと通り抜けられない程の狭さであるもののこの一本道が近道ということで田舎の人たちはここを利用するものが多かったそうです。
おばぁが小学生になり、その道を通れば15分以上は短縮出来ることもあり、度々利用していたそうです。
しかしながら、この一本道では背後から呼ばれても絶対に振り返ってはいけないというのを耳にタコが出来るほど聞かされ続けていました。
そんなある日、おばぁの同級生で近所に住んでいる睦夫君が、その道を通って学校に通う途中で背後から呼び止められ、ついつい振り返ってしまったそうです。
「俺さぁ、後ろから呼ばれてついつい振り返ってみたらさ、数メートル先で手を振って来るおじさんだけだったぜ!」って、言い伝えを破ったのと自分だけが振り返ったというちょっと格好つけた睦夫君の自慢事になっていたそうです。
しかしこの自慢もこの一日だけになってしまったそうで、彼はこの日の夜に原因不明の高熱にうなされ、医者が家に来る頃には既に亡くなっていたそうです。
近所という事もあり、あの元気だった睦夫君が亡くなったという事で小さな田舎の村では大騒ぎになりました。
そして、同じくして睦夫君と仲の良かった元くんもこの一本道で背後から呼ばれ、振り返ってしまったそうです。
彼もまた、同じくしてその日の帰宅途中に野原の横にある側溝に転落し、発見した時には既に亡くなってしまっていたそうです。
睦夫くんも、元くんも言っていたのは、「おじさんが手を振っているだけだった」と言う事でした。
恐らくですが、振り返ったものをあの世に誘う、あの一本道にはこの世から連れて行こうとする死の選別人がいたのかもしれません。
第二十八夜 振り向くな、終わりです。
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