第二十七夜 お墓
知り合いの廣瀬さんから聞いた話です。
廣瀬さんは山奥に住んでいて、都会に住むことなく、その山奥から仕事場のある都会に2時間掛けて出勤していたそうです。
もうかれこれ5年はこの通勤なので苦痛も無く、通っていました。
しかし、長年通った道にお墓があるのに気づいたのはつい最近の事で…「こんな見えやすい場所なら、前からあったって気付いていたはずなのにな…」と疑問に思っていたそうです。
それもそのお墓はたった一つポツンとあり、つい最近建てられた感じでも無かったそうで、不思議に思いながらも別に気にも止めていなかったそうです。
しかしある日、仕事が遅くなり深夜にこの道に通り掛かります。
運の悪いことに、お墓が見える場所で車の不具合が起こり止まってしまったそうです。
夜も遅く、山奥という事でJAFが来るのには翌朝になると言われ、車の中で一夜を明かすことにしたそうです。
運良く食料は買って帰っている途中だったのであり、食事を済ませスマホを弄っていると、コンコンと車を叩く音がします。
こんな深夜にここを人を通るとは思えないし、周りを見渡しても人らしき姿は無かったそうです。
しばらくすると、眠気に襲われ眠ってしまっていると、ドンドンと車を激しく叩かれます。
車が通れずに怒っているのだと慌てて飛び起きます。
周りに車はおらず、人の気配も無かったそうで一気に寒気に襲われたそうです。
パッと前を見ると、あの墓が目に入ります。
車のライトを付けると、丁度照らされる位置にいます。
ここで廣瀬さんは異変に気づきます。
ライトが届く位置では無かったはずの車が、ライトが当たる位置にまで寝ている間に進んでいたそうで、墓をよく見てみると墓の下から何者かが這い出てきている。
車は徐々に前進を始めて、ブレーキもアクセルもハンドル操作も出来ない状態でした。
墓の目の前で車が止まり、恐る恐る目を開けると、フロントガラスいっぱいに張り付いた顔面から血を流し、この世のものではないとわかる男が苦しそうにこっちを見ていたそうです。
そのまま、気絶した廣瀬さんはJAFの方に起こされて、ようやく意識を取り戻したそうです。
後にこの場所を調べた廣瀬さんは、この場所で1年ほど前にバイク事故があり、男性が即死したと言う情報でした。
それ以降はお墓の姿が忽然と消え、何も無かったようになっていました。
恐らくですが、事故で亡くなった事を認識できずこの世に彷徨い続け、誰かに気づいてもらおうとしていたのかもしれません。
それからと言うもの、毎日廣瀬さんはこの場所の前で車を止めて、拝んでから仕事に向かうようになったそうです。
第二十七夜 お墓、終わりです。
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