第二十五夜 海水浴

私の友人の浜池さんから聞いた話です。


私の友人の浜池さんは、小学生の頃よく祖母の家に行っていたそうです。


浜池さんの祖母の家は沿岸部にあり、海水浴にすぐ行けるのでとても好きだったそうです。


浜池さんは祖母にある話を聞かされていたそうで、「夏の海は油断してると足を引っ張られて溺れさせようとするモノがいるから気をつけろ!」と毎度毎度しつこく聞かされたそうです。


小学生だった浜池さんは、てっきり海にいる魚等が足を引っ張ってくると思っていたそうです…。


ある日、浜池さんがいとこと海で遊んでいると、いとこが「足、足!!」と血相を変えて叫びます。


ふと足元を見ると、足元には無数の手が浜池さんの足を掴もうとしていたそうです。


海から出ようと必死に砂浜へ向かいますが、無数の手の一本が浜池さんの右足を捉えます。


物凄い力で海へ引っ張り返され、ますます砂浜が遠のいていく、いとこも必死に浜池さんの腕を掴んで砂浜へ引っ張ろうとしますがあまりの力にどうする事も出来ないでいました。


浜池さんは本当に死を覚悟したそうです。

すると、その姿を見ていたおじさんが何とか救い出してくれたそうです。


そのおじさん曰く、「この海は昔、多くの死者を出した事故があってな…それ以降は頻繁に足を引っ張られたり、海に引きずり込まれたりする人が増えてる」と教えてくれました。


あの時の無数の手は、今でも脳裏に焼き付いているそうです。


明らかに手で引っ張られた感覚も今でも覚えているそうで、それ以来その海には近づかなくなったそうです。


第二十五夜 海水浴、終わりです。

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