第七夜 大きなノッポの幽霊時計
皆さんは中古家具を購入された事がありますでしょうか?
中古家具は不要になった物を売っているものもあれば、例えば事件や孤独死の現場でまだまだ使えそうな物は中古家具として売られていることもあるんだそうです。
私の祖父から聞いた話で、祖父はまだ若い頃お金もあまり持っていなくて、家には家具なども無かったそうです。
働き出してしばらくすると、高度経済成長期になりお金も沢山もらえるようになりましたが貧乏癖が治らず、中古の家具などを購入していたそうです。
そんなある日、家に大きな時計が欲しいと思い色々な中古家具店を巡り、ようやく一目惚れした大きなノッポの時計を見つけたそうです。
時計の下半分はとても綺麗で、まるで新品のように感じ、まだまだ動いているし家の飾りとして置きたいと思い購入したそうです。
購入する際に祖父は、店主から本当にご購入で宜しいんですねと何度も何度も念押しされ、何かあるのは感じ取ったらしいですが、祖父はお化けとか心霊とか全く信じるタイプの人では無かった事もあり購入したそうです。
この時計は、12時、1時と1時間ごとにゴーンゴーンと1分間音がなるタイプの時計でした。
購入初日から祖父はその時計を気に入り、その時計を観察している内に、時計の前でうたた寝をしてしまったそうです。
ゴーンゴーンという音で目が覚めた祖父は、「ついウトウトしてしまった…」と時計を見ました。
時計は今まで12時、1時と1時間ごとになっていた筈なのに時計が指しているのは、深夜0時12分、「やっぱり中古だし何か狂いが生じてるんだ」と思っていましたが、少し店主のあの言葉が気になりました。
「本当にご購入されるですね…。」
少し胸騒ぎを感じながらも、その日は寝床につきました。
それからも0時12分の時だけ音がゴーンゴーンと一定の時間外になる日々が続き、そろそろ慣れだしていた頃、祖父は友人数人と麻雀をするのが好きで、この日も友人を自宅に招き入れていました。
一人の友人が霊感が強いと言う事を聞いていた祖父は、その時計を見せることにしました。
「なぁ、この時計何か見えるか?」と祖父は霊感の強い友人の中山さんに聞きました。
中山さんは、その問に返答をしなかったそうで、「申し訳ない今日は帰らしてもらうよ…」とその言葉だけ残すと一目散に帰ってしまったそうです。
「何で教えてくれないんだよ!」と内心腹が立ってしまったそうで、残る友人2人と3人で深夜近くまで飲んだりしていたそうです。
次の日の朝早く、祖父の元に昨日逃げ帰った中山さんがやって来て、「昨日は申し訳なかった」と謝りに来ました。
「昨日、あの時計に見えたものなんだけど…」と中山さんが話し出します。
「時計を一見見た時から、ずっと時計にベッタリ張り付いている老婆がこっちを見てたんだよ…それがな…その顔が半分は腐って崩れ落ちていてこの世のものでは無いってすぐにわかってさ…それでお前にその事を話そうとしたら老婆が物凄い顔で睨んで来たんだよ…本当に恐ろしくて逃げて帰ってしまった…」と言ったそうです。
祖父は以前の持ち主について、中古家具店に行き何とか聞き出したそうです。
以前の持ち主は、中山さんの言うとおり老婆で家族も戦争で無くして、1人の自宅でこの時計に寄り添うように亡くなっていたそうです。
発見も遅かった事もあり、腐敗は酷く、時計の土台部分(下半分)も老婆の体液が漏れ出していて、新しく土台だけやり直ししていたそうで、祖父が最初新品だと思ったのはそう言った事があったからだったそうです。
老婆はこの時計を気に入っていた、夫が戦死してしまい、この時計を夫の形見としてずっとずっと抱きしめていたと言う事も聞きました。
あの時、老婆が中山さんを睨みつけたのは夫の形見をこんなに大事にしてくれる祖父に受け継いで欲しかったのかもしれません。
そして、あの0時12分は気に入っていた夫が亡くなられた時間なのかもしれませんね…と店主に言われたそうです。
そんな時計も、祖父がしばらくは大事にしていましたが、やっぱり老婆の為にもしっかり供養してあげようと言う事でお寺で供養して貰ったそうです。
あっちの世界で旦那さんと一緒になれてると良いですね。
第7夜 大きなノッポの幽霊時計 終わりです。
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