第六夜 狐道
この山は昔から狐が出る!と噂になっていて、この地域の人なら誰も近寄らない山になっています。
そんな山に、山登りが趣味な私の上司が行った時に体験した話です。
上司の高橋さんは、山登りが好きで人が訪れないような山でも俺に登れない山はないと豪語する程の山好きでした。
周りの人は「あの山だけは危険だから辞めておけ」と止められても、俺は登ると決めたら登るとその山に登りました。
朝から登り始め、そろそろお昼だし山の中腹辺りで昼休憩を取ろうと11時から1時間ほど休憩したそうです。
さぁ、山頂には2時頃には着くだろうと思っていました。
お昼の12時から山の中腹辺りから再出発して1時間も経たないうちに周りは日没のような暗さになりました。
「おかしい、夕立でも来るかな?」と思っていたそうですが、夕立では無くお昼にもかかわらず、何と周囲は真っ暗闇になったそうです。
何が起こっているのかわからず、引き返す事にしたそうです。
腕時計は間違いなくお昼の13時、しかし周りは深夜の丑三つ時の様な真っ暗闇…そこにうっすら明かりが見えたそうです。
その明かりに近づいていくと、その明かりは大きな館でガヤガヤ賑やかな音や、芸者が芸を見せて、それを見て喜ぶ客の姿がありました。
「こんな所に旅館!?」と驚きながらも、入り口に入りました。
無言の女将らしき人物がやって来て、何も言わずスリッパを出して館へ招き入れて来たそうです。
「いや泊まるわけでは御座いません。ちょっと道に迷ってしまって、下山する道を教えて欲しいのですが?」と言うと、女将は終始無言を貫いていたにも関わらず、こっちを見てニタッと笑います。
その顔はまるで狐ソックリで、周囲にいた人だと思っていた者も皆、狐の顔をしていたそうです。
慌てて、暗闇の中無我夢中で下山しますが、どこへ行っても見えてくるのはあの館の明かりばかり、まるでグルグル同じ所を回っているかのようだったそうで、力尽きた高橋さんはその場で倒れ、しばらく寝てしまったそうです。
「大丈夫?」と言う声に目が覚めた高橋さんは、その声の方を振り向くと地元の警察官だったそうで、予定の時間にも帰って来ない高橋さんを心配した友人が地元の警察に電話してくれたおかげで助かったそうです。
そして、高橋さんはこの山であった事をすべて警察の方に話したそうです。
「…この山に登った人は皆、そう言うんですよ…昔はね、ここは神隠しが有名で記録にある中でも30人前後はこの山で神隠しにあって結局見つからなかったんですよ…」と警察官に言われ、もしかしてあの館にいたのは狐に化かされた神隠しにあった人たちが、さらなる神隠しを生み出しているように感じたそうです。
それ以来、高橋さんは趣味だった山登りをやめてしまったそうです。
皆様も人が踏み入ってはいけないと言う場所には踏み入ってはいけませんよ。
第6夜終わりです。
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