第五夜 ビーチから聞こえる声

夏の沖縄で実際に聞いた話です。


沖縄旅行に新婚のカップルが来ていたそうです。

夏ということもあり、ビーチでは多くの家族連れや若者たちと多くの方がこのビーチを利用し、現在でも利用されています。


そんなビーチも夜になると、人もいなくなり、聞こえるのは海の波の音や風の音だけです。


しかし、夏場このビーチの近くにあるホテルの203号室に泊まった人から聞こえるのは波の音と風の音以外にもありました。


このカップルはその噂を知りながらも、心霊等全く信じないカップルで203号室に泊まる事にしたそうです。


深夜、新婚と言う事もありイチャイチャしたり、仕事の悩みや今後の将来など色んな話題で盛り上がっていたそうです。


そのうち、彼女の方がお酒も入っていた事もあり寝てしまったそうです。


飛行機の中で寝過ぎてしまった彼は、彼女が寝たあともスマホで動画を見たりしながら、眠たくなるのを待っていたそうです。


すると、深夜3時を回った頃位に彼はゴニョゴニョという声を聞きます。


他の宿泊者もこんな時間まで盛り上がってるな〜と思っていましたが、よくよく聞いてると様子が違います。


窓を開けると、波の音と風の音とともに「……ザイ…ザイ」「……日本」と語尾はうっすら聞こえるけれどハッキリとは聞こえない声が暗闇のビーチから聞こえます。


ビーチは夜は入れないようにされているし、何だこの声は?と思っていると、何回目かにハッキリと聞こえました。


「……バンザイ、バンザイ、我が日本軍!」と一人の声ではありません。何人もの声が呪文のようにこの言葉を発し、どんどん自分の部屋の方へ近づいてくる声でした。


彼は彼女を起こそうと慌てて、彼女の方へ向かおうとしましたが、足が動きません。


立ったまま金縛りにあっている状態だったそうです。


体が言う事を聞かず、顔はビーチの方に向いたままでした。


その間にもその声はどんどん近づいて来ています。


その時、他の部屋の人がベランダに出てきました。


と同時に金縛りも解けて、彼は彼女の元へと駆け寄り今あった事を話そうと必死に起こしました。


彼女はもう〜となかなか起きません。


彼が必死に呼びかけていると、ようやく彼女は起きてくれました。


今の事を話そうとすると、彼女が「バンザイ、バンザイ、我が日本軍!」と言いました。

その時の彼女の顔はいつもの彼女の顔ではなく、丸焦げになっている男の別人の顔になっていたそうです。


彼はそのまま気絶してしまい、目の覚めた時にはいつもの状態の彼女が「大丈夫?」と聞いていたそうです。


やはり、この203号室には何かを伝えたい人たちの声が聞こえるのかもしれません…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る