第二夜 呪いの時計…
世の中には触ると呪われたり、怪我をしたり、酷ければ死に至る事もあるモノが存在すると言われています。
そんなの迷信とか、そんなの信じないと言う人も多くいます。
それはそれで1つの意見で良いと思います。
今回のお話は上記のように信用をせず、大きな代償を背負うことになった男の話です。
この話は遡ること70年近く前の戦後間もない年、ようやく戦後の復興が進む日本での話です。
ある村では、あれに触れたら呪われる…、死ぬ…、仕事も出来ないほどの大怪我をすると言った迷信が囁かれていました。
その噂を酒を飲みながら一人の男が聞いていました。
その男は戦争も経験し、多くのアメリカ兵を倒して来たユキチと言う男でした。
ユキチは、戦争で左腕を失いながらも命からがら日本に戻ってきた男で、「バカみたいな噂を村人は信じている!」と常日頃周りに言っていたそうです。
そんなユキチが村をあるいていると、ふと目に入ったのが大きな時計でした。
落ちているわけでも、そこに元々置かれているわけでもなく、無造作に道に転がっているその時計を見たユキチは第一印象でその時計を気に入り、家に持ち帰る事にしました。
ある日、自宅で友人を招き宴会をしていると、一人の男が「ユキチ、お前その時計どうしたんだ?」と少し驚いた表情で聞いてきたそうです。
「この時計か、これはなぁ道端に捨てられていて第一印象で気に入ったんだよ!誰一人として見向きせず、まるで左手を失ってからの俺と重なってな…」とユキチが言いました。
「拾った…?もしかしてあの道端で…?」とユキチに問います。
ユキチが場所を言うと、周りの友人がガタガタと震えだし逃げるように「今日は帰るよ…」「ユキチ、無事でいろよ…」と何を大袈裟な事を言ってるんだ…とユキチはそれがこの村で噂になってる時計とは知らなかったのでした…。
それ以降、ユキチの家には誰も近づかなくなり、ユキチと付き合おうとする人が減っていきました。
ある日、村の村長がその時計が不幸を呼ぶことをユキチに伝えました。
「こんな長い間持っていても、別に不幸なんて起こってない!」のユキチは村長を一喝し、ますます村で浮くようになりました。
それから3ヶ月程経ち、ユキチにも村にも不幸が無く村人たちもやっぱり迷信だったんだ…と思い始めた時でした。
ある晩、ユキチが村の中でも人々が集まる(今で言う公民館)にユキチが青ざめた顔で飛び込んで来ました。
ユキチの今まで見せたことのない顔に、村人たちはただ事では無いというのがすぐにわかりました。
「おいおい…どうしたユキチ…?」と今まで避け続けた村人たちが聞きます。
「あの…時計、あの、時計が!」とユキチはまともに話すことも出来ないほど怯えています。
戦争まで行った男のその表情やパニック姿に村人はユキチを落ち着かせようと体に触りました。
「うわーーー」っと村人たちが叫びます。
ユキチの体は血がべっとりでした。
まだこの時代は灯りがあると言っても夜は、提灯のような灯りしかなく、ユキチの顔はわかっても、体までは見えていなかったのでした。
ユキチの出血は右腕からでした。
右腕は肘から下がなく、左腕と同じような状態でした。
ユキチは村人の早急の介抱により、何とか一命は取りとめました。
ユキチはあの晩のことを話し始めました。
「あの晩な、俺はいつものように晩酌を終えて寝ようとしてたんだよ…そしたらな、足元がふらついてあの時計を掴んだんだよ…そしたら時計が落ちてな、時計がバラバラになったんだ…そしたらな、その時計から男の声が聞こえてきてな」
「俺を落としたのはお前の右腕か!」と言って、時計から閃光があったんだよ…その閃光が明けたら、激痛とともに右腕は無くなって時計もまた元通りの姿に戻ってたんだよ…
「俺は呪いだの、祟だの、そんなモノは存在しないと言ってきたけどな、あれは本当の呪い物だ!」と言っていたそうです。
2022年の今ではその村が現在どうなっているのか?その時計はどうなっているかはわかりませんが…今でもまだ何処かで動き続けているのかもしれません。
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