第3話 食の価値観

 2239年、第四次世界大戦が起こった。切っ掛けとなったのは大統領の暗殺。その後30年にも及ぶ戦争。連合国・枢軸国および中立国の軍人・民間人の被害者数の総計は7億人とされる。世界の人口8%ほどが犠牲になった。


 大戦の余波により人類のサイボーグ化が急激に進行し、人ひとりに必要な食事の量を減らすことに成功した。更に大戦中は食糧不足を改善する為に、固形レーション、プランクトンジュース、培養肉などが戦時食として多く使われるようになった。

 

 遺伝子組み換え技術の大幅な発展に伴い「キメラ」と呼ばれる様々な種類の生物の因子をデザインされた新種の生命体を人類は作り出した。しかし、前時代的な畜産はコストパフォーマンスが低く一般には普及しなかった。


 当時、超個人主義かつ非国家的なvuは、多くの国で規制されていた。しかし非合法なツールを使って電脳世界にログインする”脱法ログイン”が行われていた。


 話は戻るが、戦時中さまざまな開発が行われたが、戦後大きな技術革新は起こらなかったというのは間違いである。近年の偉大な発明は再生液エリクサー転移装置ワープゲートが挙げられる。しかしこれは大衆化されてない。


 特筆したいのはデメテル社の完全栄養サプリだろう。人類の食事情を根本からひっくり返した完全食サプリメントは、『1錠飲めば1週間は飲まず食わずで健康的に活動できる!』と謳い、発売当初は効能を疑う声も多かったのが、その利便性から爆発的に普及している。これにより多くの人がより効率的に生活できるようになった。


 またハード面の進化によりvuでも完全に五感を再現することが出来るようになった。これによりお金を使わず、健康に影響をほとんど与えず電脳世界で食事を楽しめるようになった。

 

 2300年、「食」は娯楽に成り下がったのだ。

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