第44話 センリ:天使(1)
「うおぉぉぉっ! どけぇーっ!」
作戦通り〈魔法〉で変身したザファルが大声を上げ――王国と帝国――両軍が
ハッキリ言って怪獣映画だ。あんなのが突然、目の前に現れて暴れたのなら、全員失禁のうえ、トラウマになること間違いなしだろう。
更に今回は武器を所持している。
あのザファルだから軽々しく扱っているが、普通の人間なら、ああはできない。
俺の与えた『漆黒の大剣』。それに俺の〈魔力〉を注いだ。
ドクンッ!――と心臓の鼓動のような音が響く。
そうかと思うと、一部が紫色に発光し起動する。
本来は俺用の武器だろうが、仮の持ち主としてザファルを登録した。
するとザファルの大きさに合わせ、剣が巨大化したのだ。
完全に人間が扱う武器の大きさではない。
俺の扱う〈魔法杖〉同様、二つの形態を持ち〈魔力〉の鎖による連結が可能なチェインブレードとしても使える。大きさから
ザファルが
そこには、かなりの〈魔力〉が溜まっているらしい。
彼女たちの護衛は射程のあるトウマを任命した。
状況次第では、俺たちの方へ加勢に来てもらう
本来ならカエデたちが政治的に揺さぶりを掛けてから、適度に両軍に損害を与え、引かせる予定だった。
だが『天使』が現れたのであれば仕方がない。
黙っていれば、王国と帝国の両軍は全滅だ。
ここからは時間との勝負になるだろう。
意外だったのは、ジゼルが〈魔導兵器〉の
遠隔による操作が必要となるのだが『漆黒の杖』の効果なのだろうか?
不安は残るが〈魔導兵器〉の操作は彼女に任せている。
俺とガルシーアは、その〈魔導兵器〉で上空に運ばれ、投下されるような形で空を飛んでいた。
いや、落下という方が正しいだろうか?
これで俺が気を失っても、ガルシーアが身を
「こんなんばっかだよっ!」
お前といると
こっちも、ぶっつけ本番なので上手く行く保証はない。
俺は〈魔法杖〉を銃形態で両手にそれぞれ召喚する。
射撃が得意とはいえない俺の実力ではデメリットしかない。
だが威力だけなら、これが最大火力となる。
相手は巨大だ。そのため、いくら俺が下手でも外しようがないだろう。
俺は体内に〈魔力〉を
今までとは違い、手加減など考える必要はない。
(まあ、今までも手加減はできていないがな……)
純度の高い〈魔力〉を生成したためだろうか? 銃の形状が変化する。ジゼルが見ていたら『デストロイモード』とでも命名しそうだ。
「ちょっ! 背中で『すっげぇー嫌な音』がしてるんだけど……」
そんなガルシーアの言葉に、
「気にするなっ!」
と俺は引き金を引いた。漆黒の光が解き放たれ、すべてを闇色に染め上げる。
空中で静止していた『コクーン』を横薙ぎに破壊するよう銃口を動かす。
同時にできるだけ多く、周囲の飛行物体も巻き込む。
(取り
そう思った瞬間、俺の意識は途切れた――
次に俺が目を覚ますと、青空にヒラヒラと白い雪が舞っていた。
(いや、桜の
俺は仰向けになって、気を失っていたらしい。無事に着地はできたようだ。
(どうやら、ソフィアたちが成功したみたいだな……)
俺が起き上がると、
「やっと、目が覚めたのかよっ!」
とガルシーア。〈魔導兵器〉を相手に槍で
帝国の〈魔導兵器〉だが、様子がおかしい。
恐らく、俺が撃ち
奴らは機械であれば侵食し、同化する。本来の目的は情報収集だ。
そのため同化しても、すぐに分離していた。
しかし、今回は母艦である『コクーン』を俺に壊された。
結果、戦力として〈魔導兵器〉を利用することにしたらしい。
想定外だったが、俺の所持する武器が『天使』に有効であることは証明された。
もう一機の〈魔導兵器〉が俺たちを
だが、真横から放たれた銃撃で
反撃をしようと抵抗するような動きを見せたが、すぐに動かなくなった。
外装を
トウマがやってくれたらしい。
「うおぉぉぉっ!」
とザファルの声が響く。大剣を振り下ろすと同時に〈魔導兵器〉を粉砕した。
怪獣映画のような絵面といえた。
「うむっ! これで最後か……」
それにしても、この武器は
トウマが確認した機体の数は十二機。
俺が気を失っている間に片付けてくれたようだ。
これで『白銀』の連中が撤退してくれればいいのだが――
(そう簡単にはいかないか……)
「ジゼルが操縦している〈魔導兵器〉を入れて十三機……」
その戦力で『天使』が出現するようだな――と俺は苦笑する。
どうやら――戦力が集中すると『天使』が現れる――というのは本当のようだ。
「残るはアレか……」
俺はそう
(嫌な感じがする……)
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