第六章 真実の果てに
第37話 センリ:決闘(1)
郊外にある戦場跡地――昔は王都の近くでも、
こういうのも有効活用というのだろうか?
たまに人目を忍んで決闘をする連中もいるらしい。
(スポーツでも使えそうだな……)
野球やサッカーのチームを作るのも良さそうだ。
次の仲間は、その辺の経営に強そうな貴族もありだな。
俺は今、そんな地形の中央に立っていた。
(戦力的に、もう少し人材を集めたかったが……)
どうやら、時間切れのようだ。
トウマの話によると帝国軍も動き出しているらしい。
この白銀世界の帝国は――ネレイス帝国――といい、種族別に
種族に関わらず、能力を持った者たちを登用しようというリリス王国の考え方は邪魔らしい。
当然、リリス王国の中にも『自分たちの利権を守ろう』という勢力がある。
旧体制派だ。
階級制度による社会を
トウマたちが協力することで、二国から――魔人族の国を認めてもらう――という約束をしていたようだ。
当然、王国も帝国も、絶対に約束を守るとは限らない。
また、属国のような
しかし、それでも魔人族のように
(いや、そんなのは建前か……)
単純にトウマはユナが普通に暮らせる場所を作りたかったのだろう。
そして、彼女は自分の力で、その場所を作りつつある。
トウマとしても、これ以上、戦う目的を見出せなくなった――
(そんなところか……)
また、帝国の理念からいって、この世界の全てを配下に置くと考えているはずだ。
階級制度が徹底されれば、国民の統治も
そうなると〈魔力〉を持たない種族にとっては、更に生き辛い世界になるだろう。
結局は、トウマたちは戦い続けるしかない
今なら〈魔王〉という存在を望む気持ちも理解できる。
トウマは帝国の思惑に気づき、俺たちに接触してきたようだ。
ここへ来て、前女王の意思を
勝手な言い分のような気もするが、彼らはギリギリのところで戦っているようだ。
大切な人を守れず、長い間眠りについていた俺には、そこを責めることはできない。
トウマが出してきた条件は――力を示すこと――それだけだ。
つまりは一騎打ちでザファルに勝てばいい。
こちらが勝てば、トウマたち解放軍はソフィアの軍門に下るという。
ザファルが勝てば、ソフィアを彼らに渡すという条件になっている。
当然、あの場で即答はできなかったが、
「まあ、
とソフィア。俺の勝利を
「これでユナも、お兄さんと一緒に暮らせますね」
そんなことを言って、すっかり勝ったつもりでいる。
だが、これ自体が罠の可能性もある。
俺個人としては、
(まあ、ユナのためでもあるし、仕方ないか……)
トウマは解放軍と名乗っていたが、ザファルを信頼する辺り、戦力は多くないのようだ。
(チーム戦を申し込まれなくて良かった……)
と俺は内心、
それはアカリとガルシーアの二人と一緒に、王都へと戻ってきた日のことだ。
集落から王都への移動は〈魔力〉で動く自動車があるため、比較的楽だった。
この世界の地形は――平地が多い――というのも理由の一つだろう。
あの時は、コウガの様子からガルシーアとの二人旅になると思っていた。
だが意外にも、アカリは――一緒に行くよ☆――と言う。
どういう心境の変化があったのかは分からない。
だが、コウガはアカリの
願ってもない申し出に俺は深く感謝する。
アカリ母の機嫌も
その後、俺たちはすぐに出立する。
ガルシーアによると――今から出ると王都へ着くのは夕方だな――という話だ。
そのため、俺は先に学園へと連絡を済ます。
予定外の
あまり心配を掛けるワケにはいかない。
俺とアカリはガルシーアに運転を教えもらいながら、無事に王都へと
真っ直ぐに学園へと向かうと、姫であるソフィア自ら出迎えてくれた。
「救世主様っ!」
とソフィアが抱きついてくる。
姫として
(いや、今更か……)
学園に着くと早々に、俺はソフィアに手を引かれ案内される。
どうやら、学園の施設の一部を貸し切りにしているようだ。
ジゼルとガルシーア、そしてアカリの歓迎会を行うらしい。
ユナたちが手伝ってくれました――と嬉しそうにソフィアが説明する。
「見て下さい、これで私も『リア充』です!」
『パリピ』ですよ!――と言ってパーティー会場へと案内された。
俺としては『ソフィアに変な言葉を教えないで欲しい』と思ってしまうのだが――
「そうだな」
と
すると――プイッ!――とそっぽを向かれる。
一方で――わぁ、ありがとう!――とアカリ。
こういう時、アカリの存在は本当に助かる。
フンスッ!――と得意気に鼻息を荒くするソフィア。
(パーティーなど、お城でもやっていただろうに……)
苦笑しつつ、楽しそうにする彼女たちの姿を俺は忘れないだろう。
皇女殿下を失い、仲間たちもいない。
世界にたった一人、取り残されてしまったように思う時もあった。
だが、また作ればいい。そんな簡単なことを俺は忘れていたようだ。
(俺が勝てば、あの場所を取り戻せるだろうか?)
皇女殿下や、かつての仲間はもういない。
けれど、手の掛かる主人と新しい仲間がいる。
希望という名の未来はいつだって、手を伸ばした先にあるのだ。
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