第35話 センリ:集落(2)
「くそっ、
ガルシーアが庭の片付けをしながら
「岩に
俺は庭の片付けをしながら、ガルシーアの疑問に答える。
ぐぬぬっ……!――とガルシーア。やはり納得がいかない、そんな顔をしている。
一方でコウガは黙々と作業を行っていた。
熊を連想させるような巨体だが、
俺は見なかったことにする。
「それより、ガルシーアも同じことができるのか?」
先程、俺とコウガが行ったような『〈魔力〉を使った戦闘ができるのか』を質問すると、
「当たり前だろ! 刑務所じゃ〈魔力〉が
ガルシーアは『心外だ』とばかりに答える。
〈魔力〉が使えない状態でも、あれだけ戦えるのなら問題ないだろう。
やはり、ザファルの戦闘能力が異常なだけのようだ。
庭は
それに〈魔法陣〉の発見も大きい。
どうやら、俺の身体には〈魔法陣〉が複数個所に隠されているようだ。手足など、特定の部位に一定以上の〈魔力〉を流すことで〈魔法陣〉が解放される。
今までは〈魔法杖〉の出し入れにしか〈魔法陣〉を使っていなかったのだが、戦闘のための機能が隠されているらしい。
〈魔力〉を体内に
色々と
これにより、属性の付与や〈魔法〉の使用が可能になった。
戦術が『大幅に広がった』と言ってもいい。
俺は立ち上がると身体を伸ばし、腰を
これはアカリがやってくれている。そんな彼女の姿を見ていると――本当は軍人なんかよりも、医者のような仕事の方が合っているのだろう――と思ってしまう。
俺の担当分はアカリが手伝ってくれたお陰で早く片付いた。
アカリ母に頼み確認してもらう。
その一方で、コウガとガルシーアは力仕事に精を出していた。
(これは時間が掛かりそうだな……)
身体が汚れたので、アカリにお風呂に入りたい
家主よりも先に風呂を頂くのはどうかと思い、俺はその申し出を断る。
アカリとしては好きで俺の世話を焼いてくれているのだろう。
だが、それを当たり前のように
彼女は俺のマスターであるべきなのだ。
それに俺ほどではないが、アカリも汗を
そんな彼女を差し置いて、俺がゆっくり風呂に入るワケにも行かない。
「この集落に大衆浴場とかはないのか?」
大衆浴場――つまりは銭湯だ。
「あるヨ☆」
とアカリが言うので、食事の前に二人で入ってくることにする。
集落と言っても、ちょっとした町程度の規模はあるようだ。
恐らく、食料に合わせて人口を調整しているのだろう。
集落には獣人族以外の種族の姿もあった。
また、他の民家と比べるとアカリの住む屋敷は立派で大きい。
この集落の顔役なのだろう。
「こんな世界でなければ、アカリも『お姫様』だったのかもな……」
俺が、そんなことを
「まあ、救世主様……嬉しいです♡」
アカリはソフィアの
「ソフィアが二人いると考えると頭が痛くなりそうだ……」
やめてくれ――と俺が言うとアカリは楽しそうに笑った。
そんな彼女は、この集落では人気があるようだ。
(当然か……)
歩いている途中で『子供たちに囲まれる』というハプニングが発生する。
遠巻きに見ている分には
だが、
(視線が痛い……)
子供たちは子供たちで好奇心
「アカリ姉ちゃんの恋人か?」
などと聞かれる。
「運命の人だよ」
とアカリが言った
集落の男たちだろうか? 早々に、この場を立ち去った方が良さそうだ。
俺はアカリを
(やっと、のんびりできる……)
お互いに時間を確認して、待ち合わせをする。
「本当に恋人同士みたいだネ☆」
とアカリ。返答に困るのでやめて欲しい。
「恋人というより、夫婦のような気もするがな……」
なぜか俺も真面目に答えてしまった。アカリと別れた後、急に恥ずかしくなる。
これも皇女殿下の罠だろうか? いや、考えすぎか……。
しかし、脱衣所やロッカー、瓶に入った牛乳のようなモノまで売っている。
どう考えても、和の文化を伝えたのは皇女殿下だろう。
やはり、
さっさと服を脱ぎ、俺は洗い場で身体を洗うと、湯船の中で少し考える。
この『白銀』の世界で水や土、植物を作り出せるのは〈魔法〉のお陰だ。
あの庭があるのも、こうして銭湯に入れるのも――
(すべては〈魔法〉があるからだ……)
人々の生活は〈魔法〉に依存している。この世界で暮らす以上〈魔力至上主義〉になるのは、仕方のないことなのだろう。
ただ、人々が豊かになるための〈魔法〉が『争い』や『差別』を生み出す原因にもなっているのは、心境として複雑だ。
(皇女殿下は、この世界で
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