第20話 センリ:学園(3)
「良かったですね♡」
早速、候補が見付かって――とソフィアは喜ぶ。
こうして制服姿で話していると『部活を作る』みたいな気分になってくる。
(いつまでも、学生気分が抜けないモノだな……)
困ったモノだ――と考えながら、俺たちは廊下を歩いていた。
お礼を言って、学園長室から出たのはいいが――
正直な所、どうすべきか悩んでいた。
なぜか皇女殿下は人の心を
参考に出来そうな行動を思い出す。
まずは、情報を集めるべきだろう。
その生徒と交渉する際にも、有利に働くはずだ。
だが、危険な任務のため、本人の強い意志が重要だ。
それに、どんな人物か『自分の目で見極める必要がある』と考えていた。
また、性格は問わないつもりだったが、実際にはユナとの相性もある。
まずはユナと合流し、手を貸してもらおう。残りのメンバーについては、エレクトラが『知人に確認してくれる』とのことだった。
連絡を待っている
(いずれにしても、
そんな予感がした。皇女殿下に仕えていた時も、俺を含め、一癖も二癖もあるような連中ばかり集まっていた。
能力を優先すると、そういう人材が集まる傾向になるようだ。
それでも上手く行っていたのは、皇女殿下の『
才能という言葉を彼女は否定するかもしれない。
だが、彼女には人を魅了する才能があり、人を使うことにも長けていた。
しかし、それを同じようにソフィアへ期待するのは間違っているだろう。
「どうかしましたか? 救世主様……」
そう言って、無邪気に
学園ということで、気分が
学生ごっこを楽しんでいるのだろう。
出来ることなら通わせて遣りたいが、現状では
あの〈魔導兵器〉が一機だけとは限らないし、学園が標的になる可能性もある。
少なくとも現状を詳しく把握する必要があった。
歴史や国政に詳しく、戦略を立てることが出来る人材が望ましい。
次点で知識が豊富で、視野の広い人物だろうか?
学生に戦闘能力は期待しない。
ここが終われば、刑務所の囚人たちを見に行くのも手だろう。
「ユナの〈魔力〉は――こっちからか……」
風の流れを感じ取るというよりは、匂いを探すのに近い感覚だろうか?
俺は指を差す。
「分かるのですか?
と手を合わせ、喜ぶソフィア。
そんな彼女に――
現状〈魔力〉については、感覚的なことしか分からない。
なぜ使えるのか? どうやって、別の物質やエネルギーに変換しているのか?
基礎知識がない。
(後でユナに教えてもらうか……)
ソフィアに聞いてもいいが――個人授業ですね⁉――などと言って、俺が倍疲れそうな気がする。
(止めておこう……)
多少、迷ってしまったが、俺とソフィアは無事に校庭へ出ることが出来た。
どうやら、実習中のようだ。
植物に〈魔力〉を注ぎ、成長などの変化を調べているらしい。
生徒たちは
(さて、ユナは……)
俺は周囲を見回す。皆、同じ制服なので探すのが面倒だ。
まあ、小柄な女生徒という点に注目すれば、すぐに見付かるだろう。
「あら、あちらに……ユナーっ!」
と先に見付けたソフィアが手を振る。
一斉に周囲の生徒たちが、こちらへ注目した。
そんな中――ビクンッ――と反応した女生徒が一人。
ユナである。彼女の性格を考えると、あまり目立つのは好まないだろう。
俺は内心『すまない』と思いながら、笑顔で歩き出すソフィアの後に続いた。
建前は『御忍びの学園見学』ということになっている。
目立たないように、気を付けて欲しい所だが――
(
俺自身も童顔のため、制服を着ていれば目立たないと思っていたのだが、黒髪黒瞳は珍しいようだ。
視線を感じる。やはり、学園という場所は自分たちと違う存在に対し、過剰に反応するらしい。
「やあやあ、ユナ殿の知り合いでゴザルか?」
ニンニン――と長身でグラマーな女子生徒が話し掛けてくる。
本来、
忍者装束の上に、学園指定の白のローブを
ユナの友達のようだが、出ている所が出ているため、横に立つと対象的だ。
勘違い忍者――と言ってしまえば、それまでだが……。
この世界では〈魔法〉と〈忍術〉の区別が難しそうなので判断に困る。
「おおっ!
と嬉しそうに
制服を改造しているのか、少しお洒落な感じがする。
二人とも、ユナと同じグループのようだ。
肝心のユナは、ソフィアと両手を合わせ、ニコニコとしていた。
朝、別れたばかりだというのに、どうして会うだけで、こうも楽しそうに出来るのか理解に苦しむ。ノリについて行けない俺が変なのだろうか?
「魔王様――もう、用事は済んだのですか?」
とユナ。実際に呼ばれると変な感じがする。早速、
「これが
「学園を支配しに来たナリか?」
ユナの友人と
この場に
「『ジゼル』という生徒について、教えて欲しかったんだが……」
昼休みに時間を取れるか?――そんな質問をしようとした時だった。
「ジゼル殿ならあそこでゴザル」
とくノ一。中庭にある外灯の上へと視線を向ける。
「アタシたち『余り者四天王』の中では最弱ナリぃ♪」
と眼鏡っ娘。魔人族は『差別されている』と聞いた。
だが、学園では一人ではないようだ。
安心すると同時に、濃い連中に囲まれているため、別の意味で心配になってくる。
俺とソフィアが外灯の上へと視線を向けると、そこには一人の少女が立っていた。
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