第16話 センリ:公園(1)
「あれは『天使』ではなかったのですか⁉」
まあっ!――と俺の隣を歩いていたソフィアが
ケーキも食べ終え、俺たちは高台にある公園へ来ていた。
造られた空は青く、吹く風は心地良い。
ソフィアが俺を連れて来たかった場所のようだ。
平地が続く『この世界』において、人工的に造ったのだろう。
計画的に植えられた木々の緑が人々を
ソフィアの話によると、いつもなら、家族連れや散歩で訪れる人々が目に付くそうだ。王都で暮らす人々の『憩いの場』といった所だろう。
ただ『それを知っている』ということは――
(もしかして、よく城を抜け出しているのか?)
通常なら、人々はここで思い思いの時間を過ごすのだろう。
だが、今日は人も
理由は簡単だ。俺が戦った〈魔導兵器〉の影響だろう。
あんなモノが街中に現れては、人々が不安に思うのも当然である。
いつもの日常が戻るには、
「少なくとも、俺の知っている『白銀』の機械兵器とは違うな……」
そう言って、俺は自分の知っている情報と照らし合わせた。
まず、決定的な違いは『白銀』の機械兵器は常に複数で行動する。
『白銀』の目的は、戦闘よりも情報収集だ。
それでも、安全かつ効率的に行動するので厄介だ。
手に入れた情報を確実に持って帰るための編成と考えられる。
それが単機で現れた。
更に破壊される危険を
少なくとも、一旦戻り、確実に勝てる戦力で再び
結果、それをしなかったことで、俺に破壊されてしまった。
明らかに『別の理由で動いていた』と考えるべきだ。
「そう言えば、
とアカリ。ソフィア自身も、おかしいとは思っていたのだろう。
彼女の表情が
「恐らく、右翼の強硬派だろう」
つまりは国内の反乱だ――俺は
そもそも、勝てないはずの『天使』相手に『王都の兵は応戦できていた』という。
これは明らかにおかしかった。
最初から他は『相手にされていなかった』という可能性もゼロではないだろう。
しかし、出現したタイミングも謎である。
森林区とはいえ街中だ。
ソフィアが狙いであるとすれば『彼女の単独行動を狙った』としか思えない。
(わざわざ『天使』がそんな行動をするだろうか?)
複数の機体で王都を取り囲めば済む話だ。
人々は降伏し、ソフィアは自らの意思で『天使』の
ただ――『天使』に姫が
先代より改革を
先代の女王の孫であり、軍部からの信頼も厚いと聞く。
事故や暗殺では、その軍部を敵に回してしまう可能性が高い。
彼らが政権を取り戻す際、逆に彼女を人質に取ることで、軍部の介入を防ぐ抑止力にもなる。
また――『天使』に捕まってしまった姫を助けた――という芝居を打てば、一気に状況が変化しただろう。
少なくとも『助けられた手前』ソフィアの発言力を封じることが出来る。
また、軍部も恩を感じて協力的になるはずだ。
そして、一番大きな結果は『国民の支持を集めることが出来る』ことだろう。
求心力を失っている現国王からすると大打撃だ。
中立を保っている貴族たちを味方に付けることも
俺の考えを聞いたうえで、
「そんな……っ!」
とショックを受けるソフィア。無理もないだろう。
少なくとも、彼女を監視し、情報を流している人間が周りに居ることになる。
裏切り者が居るのだ。また、自分の軽はずみな行動で国王派を危機に
良かれと思って行動したことが、裏目に出てしまったのだ。
「気にするな……」
俺はソフィアの頬に触れる。
「俺が『目覚めたこと』と『〈魔導兵器〉を破壊されたこと』で計画は
彼女の瞳を見詰めながら、
「敵の目的が分かった以上、一つずつ潰すだけだ」
と言って、耳に触れる。
「ひゃうっ♡」
とソフィアは
もし、ソフィアが彼女の孫であるのなら、持てる力のすべてを使って守護する。
(それが皇女殿下の意思なら……)
俺はそれに
「
と俺は告げると、ソフィアから手を離す。
そして、歩きながら
まずは『天使』を
あれは国外で造られたモノを国内に持ち込み、組み立てたモノだろう。
バラバラにして持ち込むことで、関係者を特定させないようにも出来る。
後は適当な場所で組み立てればいい。
試運転くらいはしているだろから、そこから情報を集めることが出来そうだ。
同時に国外からの攻撃でもある。
「ソフィアの方から、軍部に話を通してくれ」
と俺は指示を出す。これで少しはソフィアの身を守れるだろう。
最初は――ゆっくりでいいか――と思っていた。
だが、使える時間は限られているようだ。
気が付くと、俺たちは見晴らしのいい展望台へと来ていた。
王都が一望できる。
どうやら、ソフィアはこれを見せたかったようだ。
「
とソフィア。眼下では、
「救世主様――いえ、センリ様!」
それにアカリ様とユナ様――ソフィアはそう言って俺たちから距離を取ると、
「この王都を救って頂き、ありがとうございます」
どうか私にお力をお貸しください――と頭を下げたのだった。
俺は――王族が軽々しく頭を下げるな――そう言おうとしたのだが、
「
と少女たちが手を取り合っている。
ここで
俺は
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