第19話

「父がセレナさんに何かをしたせいで、彼女は亡くなってしまった……。私はそれを確かめに行く必要があるの……」

「ピーシャさんのお父様が何をしたというんですか……?」

「父は、セレナさんの研究を手伝っていたの……。そして、セレナさんは父のことを信頼して、セレナさんにしか作れない特別な薬を作ってほしいと頼んでいたみたいなんだけど、ある日突然、セレナさんは姿を消してしまって……。セレナさんがいなくなってしまった後、私はずっとセレナさんの帰りを待っていたのだけど、結局セレナさんは帰って来なかったの……」

「そうだったんですか……」

「ええ、セレナさんが失踪してしまったのは、父のせいじゃないかと私は思っているわ……」

「それはちょっと考えすぎじゃないですか?」

「そうかしら……?」ピーシャは首を傾げた。

「はい、ピーシャさんのお父さんはセレナと一緒に研究をしてたんでしょう?」

「そうなんだけど、父は昔から研究のことばかり考えている人で、他のことには無関心な性格だから……」

「なるほど……。でも、仮にピーシャさんの考えが当たっていたとしても、セレナの死因は事故によるものかもしれないですよ……」

「うん、私もその可能性はあると思う……」

「それなら、ピーシャさんはセレナの最期について調べる必要はないんじゃないですか?」

「うーん、やっぱり気になるのよね……。それに、セレナさんの遺体の一部を保管しているのは私だし、もし本当に私の父親が関わっているのなら、責任を取らないといけないとも思うから……」

「そうか……」私は小さく息を吐いた。

「ところで、ピーシャさんはこの部屋にあるものは全て見たことがあるんですよね?」

「いいえ、まだ全部は見て回ってはいないわよ……」

「そうですか……」

「あっ! ひょっとしたら、この部屋の中にある物の中にセレナさんの身体の一部があるかも知れないってこと?」

「はい、そういうことです……」

「ふむ、確かにあり得るかもね……」

「それじゃあ、探してみましょう……」

「そうね!」ピーシャは大きく深呼吸すると、木箱の中を調べ始めた。私はピーシャと共にセレナの肉体の一部がないか探し回ったが、残念ながら彼女の肉体を見つけることはできなかった。

それから、私たちは地下室を出て、アイラが待っている玄関ホールに向かった。

「お兄ちゃん、ピーシャさん、おかえりなさい!」アイラは元気よく挨拶してくれた。

「ああ、ただいま……」私は微笑んだ。

「セレナさんは見つかったのかい?」

「いえ、見つかりませんでした……」私は首を振った。

「そうか……。まぁ、簡単に見つかるとは思ってはいなかったけどね……」

「すみません……」

「いや、謝らなくて良いんだよ。それより、これからどうするんだい?」

「ピーシャさんは、セレナさんの遺体を安置してある場所に行こうとしています」

「なるほどね……」

「それで、ピーシャさんに案内してもらおうかと思っています」

「分かったよ。ピーシャさん、よろしく頼むよ」

「ええ、任せておいて……」ピーシャは力強く答えた。

「それでは行きましょうか……」私はピーシャに声をかけると歩き出した。

「ピーシャさん、待ってくれ……」

「んっ? どうかしたの?」

「ピーシャさんには聞きたいことがいくつかあるんだけど、まず最初に一つだけ教えてほしい……」

「なにかしら……?」

「セレナはどうして亡くなったのか分かるかい?」

「ごめんなさい、分からないわ……」ピーシャは申し訳なさそうに言った。

「そうか……。ちなみに、セレナの研究を手伝っていたっていうピーシャさんの父親は今どこにいるか知っているか?」

「知らないわ……」

「ピーシャさんは父親のことを恨んでいるのか?」

「…………」

「おい、黙っていないで何か言えよ……」

「別に……」

「そうか……。ピーシャさんが父親に対して怒っている理由は何となく分かるよ。でも、もしもピーシャさんが父親のことを許せるというなら、一緒に行ってあげてくれないか?」

「嫌よ……」

「えっ?」

「だって、私は父を憎んでなんかいないもの……」

「本当なのか……?」

「ええ、もちろん……」

「それなら、なんで……」

「父に会いたくない理由なんて、説明するまでもないでしょう……?」

「うーん……」

私はピーシャの気持ちがよく分からず困惑した。

「ねぇ、セレナさんの遺体が保管されている場所に行く前に、少し寄り道してもいいかな……?」

「構いませんけど、どこに行くんですか……?」

「この屋敷の裏手にある森の奥深くだよ。そこに私の家があるの……」

「ピーシャさんの家ですか……」

「うん、そう……。もしかしたら、セレナさんの身体の一部はそこに置いてあるかもしれないからね……」

「分かりました……」

「ピーシャさん、私もついていっても良いかい?」

「ええ、良いわよ……」

「ありがとう……。それじゃあ、早速行こうか……」

私たち3人は裏庭に出て、ピーシャの家の方に歩いていった。

しばらく歩くと、森の中に入った。辺りは薄暗くて、不気味な雰囲気が漂っていた。

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こんなステータスで復讐できますか? ニート @pointinline

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