第17話

「セレールナさん……」

「はい、何でしょうか……?」私は思わず身構えた。

「セレナさんのことでお願いがあるのですが、聞いていただけますか?」

「ええ、俺にできることであれば何でもやりますよ……」

「本当ですか!? それを聞いて安心しました……。それでは、セレナさんのことなんですが……」彼女はさらに声を潜めると、驚くべきことを口にした。「セレナさんの魂を呼び戻して欲しいのです」

「……え?」私は思わず目を丸くした。そして、慌ててアイラの方に視線を向けたが、彼女は不思議そうな顔をするだけだった。

(まさか、この人まで俺と同じことができるっていうのか……?)

「セレナさんが生き返れば、きっと夫は喜ぶと思うんですよ。だから、どうかお願いできないでしょうか……?」彼女は深々と頭を下げてみせた。

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ! セレナが蘇るなんてそんなことが本当にできると思っているのですか?」

「ええ、できますよ。だって、あなたはセレナさんの息子さんですから……」

「いや、だから俺はセレナの息子なんかじゃ……」

「あなたはセレナさんの息子です……。あなたなら絶対にセレナさんを復活させることができます……」

「そ、そんなこと言われても……」私は困惑しながらピーシャの顔を見つめた。だが、彼女が冗談を言っているようには見えなかった。

「お兄ちゃん、セレナのお母さんを助けてあげようよ!」アイラは満面の笑みを浮かべると、私の腕に抱きついてきた。

「助ける……? もしかして、ピーシャさんはセレナが幽霊になっているとでも思っているんですか?」

「はい、その通りですよ……」

「な、なるほど……」私は苦笑いを浮かべた。そして、セレナの姿を思い出そうとしたが、やはり何も思い浮かばなかった。

「セレナさんの魂を肉体に戻すことは可能ですか?」ピーシャは期待に満ちた眼差しで私のことを見つめてきた。

「まぁ、不可能ではないと思いますけど……」

「それではお願いします! セレナさんに会わせてください!」

「えっと、ピーシャさんはセレナに会ったことがあるんじゃないんですか?」

「いいえ、私は一度もありませんよ。ただ、夫が亡くなった後、一度だけセレナさんの家にお邪魔したことがあります。その時に見た彼女の姿は、とても美しいものでした。もし、もう一度彼女に会えるというのならば、こんなに嬉しいことはないですよ……」

「そういうことだったんですか……」

私はピーシャの気持ちを理解してため息をつくと、覚悟を決めた。

「分かりました……。ピーシャさんのためにも、セレナを復活させましょう」

「ほ、本当ですか!? ありがとうございます!!」ピーシャは涙を流しながら何度も頭を下げてきた。

「お兄ちゃん、頑張ってね!」アイラは無邪気な笑顔でエールを送ってきた。

「ああ、任せてくれ……」私は力強く返事をした。

「それで、セレナはどこにいるんですか?」

「セレナさんは街の墓地にいます。夫の眠る隣にセレナさんのお墓も建てられていますよ……」

「なるほど、そういうことですか……」私はピーシャの話を聞いて納得した。

「セレナさんの魂を呼び戻すためには、セレナさんの遺体が必要になります。セレナさんの遺体は、セレナさんの実家にある地下室に安置されているはずです。私が案内させていただきますね……」

「えっと、セレナのお父さんは今どうしているんですか?」

「彼はセレナさんが亡くなって以来、ずっと塞ぎ込んでしまいました……。セレナさんが亡くなってしまったのは自分のせいだと思っているみたいなんですよ……。ですが、彼がセレナさんの死に関与しているとは考えられません……。セレナさんが死んだ原因は、事故だったらしいので……」

「そうだったんですね……。ちなみに、セレナのお父さんの名前は何と言うんですか?」

「彼の名前はガルガドと言います……。彼ならきっとセレナさんを復活させる方法を知っているはずですよ……」

「そうですか……。それなら良かったです……」

私はピーシャの言葉に安堵すると、ピーシャと一緒に部屋を出た。そして、セレーナの実家へと向かうことにした。

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