第14話

 それからしばらくして、私はアイラと共に家へ帰っていた。

「楽しかった!」

「それは良かったよ」

「また一緒に来ようね」

「あぁ、もちろん」

私が笑顔で言うと、アイラも嬉しそうに笑った。そして、彼女は思い出したように口を開いた。「あっ、そういえばお母さんが言ってたんだけどね。もうすぐお祭りがあるんだって」

「祭り? それなら毎年やってるじゃないか」

「違うの! 今年はいつもより豪華らしいの!」

「そうなのか……」

(まぁ、そういうことなら行ってみてもいいか)

私はそんなことを思っていると、アイラが突然立ち止まった。

「どうかしたのか?」

「ねぇ、お姉ちゃん……」

「ん? どうしたんだ?」

「あのね……」

アイラは言いづらそうな表情を浮かべている。一体何を言われるんだろうと、少し不安になりながらも待っていると、彼女は意を決したように顔を上げた。

「もし良かったら、一緒に行かないかなって思って……」

(なるほどな……。つまり、俺に案内役をして欲しいということか……)

アイラは恥ずかしそうに俯いている。私は優しく頭を撫でると、彼女に声をかけた。

「俺は構わないけど……」

「本当!?」アイラの表情がパッと明るくなった。

「あぁ、約束するよ」

「やった! ありがとう!」

彼女は嬉しそうに笑うと、私の腕に抱きついて甘えてきた。そして、上目遣いで見つめてくる。その姿はとても可愛らしく、私は思わずドキッとした。

(本当に可愛いな……。というか、いつまで経っても慣れないんだよな……)

「どうしたのお姉ちゃん?」

「いや、何でもないよ」

「ふぅ~ん、そうなんだぁ……」アイラはニヤリと笑みを浮かべると、さらに強く抱きしめてきた。

「ちょっ、ちょっと待ってくれ! 苦しいから!」

「えぇ、しょうがないなぁ……、じゃあ離してあげる」

「はぁ……、死ぬかと思ったよ……」

「大げさだなぁ……。それより早く行こうよ」

「あぁ、そうだな……」

私は苦笑いしながら答えると、彼女の手を取って歩き始めた――。

しばらく歩いていると、町の中心部へとたどり着いた。すると、辺り一面に屋台が立ち並んでおり、大勢の人が行き来していた。

「うわぁ、凄いな……」

「そうだね!」

「それで、アイラは何を買いたいんだ?」

「えっとね……。とりあえず、お菓子とか甘いものが欲しいかな……」

「分かった。じゃあ、色々見て回ろうか」

「うん!」アイラは嬉しそうに返事をすると、私の腕にしがみついた。そして、ゆっくりと歩き始める。

(こんなにも人が多いとはな……)

私は改めて祭りの規模の大きさを感じながら歩いていた。すると、ある店の前でアイラが足を止めた。そこには美味しそうな焼き菓子が並べられていた。

「これ、おいしそうだね!」

「確かにうまそうだな」

「ねぇ、お姉ちゃん……。買っても良い?」

「別に構わないぞ」

私が言うと、アイラは嬉しそうに笑いながら、商品を手に取った。そして、店員の女性に向かって声をかけた。

「すみません、これをください!」

「はい、まいどあり!」女性は笑顔で言うと、小さな袋を手渡してきた。

「ありがとうございます!」アイラは頭を下げると、私の方を見た。

「じゃあ、次はどこにいく?」

「うーん、とりあえず何か食べようか?」

「うん! 私、お腹空いちゃった」

「じゃあ、適当に探すとするか」

私たちは適当な飲食店を見つけると中へ入った。席に着くなりメニュー表を見てみると、たくさんの料理が載っており、どれも食べたことのないものばかりだった。

「ねぇ、何にするの?」

「そうだな……」

(こういう時は定番のヤツでも頼むか……)

私はそう決めると、アイラに話しかけた。

「アイラは何を食べるんだ?」

「私はね……。このパンケーキっていうのが気になるんだけど、一緒に頼まない?」

「あぁ、良いぞ」私が同意を示すと、彼女はすぐに注文をした。そして、しばらくして運ばれてきたものは、とてもボリュームのあるものだった。

「わぁ、すごい! いただきます!」アイラはフォークを持つと、勢いよく口に運んだ。

「おいしい!」

「それは良かったな」

「お姉ちゃんも食べる?」

「いや、俺は大丈夫だよ」

「遠慮しないでいいのに……」

「気持ちだけ受け取っておくよ」

「そっか……。じゃあ、後でお返ししてもらおうかな……」

「お礼ならもうもらっただろ?」

私が不思議そうな顔をしていると、彼女は少し頬を赤らめながら言った。

「だって、お祭りに誘ったんだもん……」

「そうか……」

(まぁ、そういうことなら仕方ないか……)

「ねぇ、今度はお姉ちゃんが選んでよ」

「俺が選ぶのか……」私はそう言いながらも、真剣に考え始めた。

それからしばらくの間、アイラと一緒に食事を楽しんでいると、突然誰かに声をかけられた。

「あら? あなたたちはアイラじゃないの!」

「えっ!? お母さん!」

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