第8話

 闘技場に着くと、私は試合が始まるのを待っていた。しばらくすると、アナウンスが流れてきた。

「皆様、大変お待たせいたしました! ただいまより、魔法大会を始めたいと思います!」

観客たちが盛り上がる中、私はため息を吐いていた。

(うーん……。なんでこんなことになっちゃったかな?)

「さて! 第一回戦の相手は! ダレッドナードン選手だー! それでは、入場していただきましょう! どうぞ!」

(おっ! やっと出番か)

「ふん! 俺様の登場だ!」

そう言うと、マラーギリュノが姿を現した。だが、その姿を見た私は思わず呟いた。

「あれっ?」

「なんだ! 文句があるのか!」

(いや……。なんか思ってたのと違うな)

「いや……。なんでもない」

「いい度胸だな! この前の借りを返しに来てやったんだ! ありがたく思え!」

「わかったよ……。それで、どうやって戦うつもりだ?」

「そんなの決まってるだろう。魔法勝負だ!」

「ほう……。お前にそれができると思っているのか?」

「当たり前だ! この前は油断しただけだからな」

「なるほど……。つまり、前回は私に負けるとわかっていたというわけか」

「ちっ……違わい!」

「なら良いのだが……」

「くそぉ……。馬鹿にしてぇ……」

「はぁ……。面倒だな。早く終わらせよう」

「調子に乗りやがって! ぶっ殺してやる!」

「ふぅ……。仕方がない。かかってこい」

私は剣を構えると、マラーギリュノの攻撃に備えた。

「死ねぇええええええええ!!」

マラーギリュノは叫び声を上げると、炎の玉を放った。

「遅い」

私はその攻撃を軽々と避けると、一気に距離を詰めた。そして、剣を振り下ろした。ザシュッ!!

「ぐはぁあああ!!!」

血を吹き出しながら倒れたマラーギリュノに、私は言った。

「おい。もう終わりなのか?」

「こ、降参だ……」

「はあ……」

こうして、あっさりと一回戦を突破した私は、二回戦へと駒を進めた。

「さて、次はどんな奴が出てくるんだろうな……」

私が会場に入ると、歓声が上がった。

「キャァアアー!!!」

「ロリコゼッターさんよー!」

「今日も可愛いわね」

「結婚してください!」

「黙れ変態共! 今すぐ殺すぞ!」

「ひぃ……。すみませんでした……」

「けっ……。命拾いしたな……」

「ちくしょう……。どうして俺はロリコンじゃないんだ!?」

「うるせぇ! とっとと死にやがれ!」

「ぎゃあああー!!!」

「ふう……」

私はため息を吐くと、闘技場の中心に向かった。そこには、一人の少女の姿があった。

(あいつは確か……)

「あら? また会ったわね」

「そうみたいですね」

「まさか、あなたみたいな美少女が出場するなんて……。世の中は不思議ね」

「はあ……」

「まあいいわ。とにかく、私はあなたを倒すだけよ」

「随分と自信があるようだな」

「当然よ。だって、あなたより強いもの」

「それはどうかな……」

「試してみる?」

「望むところだ」

「そう……。それじゃあ、始めましょうか。ゲルミニアス・ディアルティエールルよ」

「タカリアナだ」

「それじゃあ、行くわよ!」

「来い」

「はあ!」

そう言うと、ゲルミニアスは水の刃を飛ばしてきた。私はそれを軽く避けた。

「甘いわね!」

続けて放たれた氷の槍を私は避けようとしたが、腕を掠めてしまった。

(これは……。かなり厄介だな)

「ほら! どうしたの!」

(よし……。これなら、なんとかなりそうだな)

私はニヤリと笑うと、水弾を避けた。

「なかなかやるわね。でも、いつまで逃げていられるかしら?」

「さあな……」

私はその後も攻撃を避けていった。しばらくすると、私はあることに気づいた。

(んっ?)

「はぁはぁ……。もう限界なんでしょ! 降参しなさい!」

(やっぱりか)

私はため息を吐くと、その場に立ち止まった。そして、魔力を込めた。

「残念だったな。これで終わりだ」

私は右手を前に突き出すと、巨大な炎の玉を放った。

「なっ!?」

驚いた様子のゲルミニアスだったが、すぐに防御魔法を展開した。しかし、私の放った魔法はその全てを貫いた。

「嘘……。きゃぁあああ!!」

大爆発とともに、ゲルミニアスは吹き飛ばされた。そしてそのまま気を失ったのか、動かなくなった。

私は観客たちに手を振って応えると、控え室へと向かった。

(意外に楽勝だな)

それから少し時間が経つと、アナウンスが流れた。

「お待たせいたしました! ただいまより、第二回戦を始めたいと思います!」

「おっ! やっとか!」

「続いて登場する選手は、この方です!」

「こんにちは!」

「おおーっ! プリティーウィッチー!!」

「はぁ……」

「どうしたんですか?」

「いえ……。なんでもありません」

「そうですか。では、早速始めていただきましょう!」

「はい! 頑張ります!」

「続きまして、第三の選手の入場です!」

私は舞台に上がると、観客席を見渡した。

「うぉー!!」「ロリコゼター!!」「結婚してくれぇええ!!」「愛してるぅうう!!」

「はぁ……」

(どうしてこうなったんだろう……)

私は頭を抱えながら、対戦相手である少女を見た。彼女は可愛らしい笑みを浮かべると、手を差し伸べてきた。

「よろしくお願いしますね」

「はぁ……」

私は彼女の手を握り返すと、適当に応えた。

「はい……。こちらこそ……」

こうして、二回戦も無事に終わった。

「さて、いよいよ決勝戦ですね」

「ええ……」

「緊張していますか?」

「まあ、それなりには……」

「大丈夫ですよ! きっと優勝できますから!」

「だと良いのですが……」

「はい! それにしても、ロリコゼッターさんは何歳なんでしょうね」

「えっ? 私ですか?」

「はい」

「十六歳ですけど……」

「そうなんですか!? とても大人びているので、もっと上なのかと思いました」

「よく言われます」

「へぇ~。あっ! 始まりそうですよ!」

「本当ですね……」

(なんか、嫌な予感がするんだよな……)

「それではこれより、決勝戦です!」

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