ヤンデレ幼馴染に嫉妬でどうにかされる。r15

「ねー、今日家行っていい?」


 クラスメイト兼保育園から一緒にいる腐れ縁の女子、若月雪菜は放課後、俺にそう尋ねた。

 肩より少し伸ばした黒髪は手入れが行き届いており、ぷっくりとした唇、ぱっちりとした瞳など、整った顔はクラスでも可愛いとよく耳にする。


「いや、今日は彼女とデートだから……。てかお前俺が彼女いるのに簡単に部屋に入れると思うか?」


 俺に彼女ができるまでは、週に何度も俺の家に来てダラダラしたり、もっとちっちゃい頃は毎日一緒にいた気もする。高校に入ってからは流石に減ったけど。

 よく親から「ゆきちゃんがいてくれれば安心ね」と揶揄われていた。


「ぶー」


「いてっ」


 雪菜は頬を膨らませながら肩を思い切り殴ってくる。

 昔はこういうとき抱きついてきて、俺がやめろと言っても離れなかったが、流石に彼女がいる今はやってこない。


「ま、そういうことだから。悪いな」


 ひらひらを手を振って、俺は教室を後にする。



「……私が先に好きだったのに」


 雪菜の声は、教室の喧騒に消えるのだった。




 ☆☆☆☆☆☆



 別の日


「ーーーおい、お前の彼女と雪菜ちゃんが口論してるらしいぞ!」


「はぁ!?」


 昼休み、友達と飯を食っていると他所のクラスの友達が慌てた様子で俺の元へきた。

 どうやら、俺の彼女が他の男子と楽しげに話しているのを見て雪菜がキレたらしい。

 何やってるんだよ……。

 たしかに彼女が他の男と仲良くしてるのは気分がいいものではないが、雪菜がそれを混ぜ返す必要はないだろう。

 どう対応しようか頭を悩ませていると、聞き慣れた二つの声が耳に届く。


「ーーー本当に○○が好きなら他の男とべらべら喋ったりしないよね!? 好きじゃないなら別れなよ!」


「この人は友人です! 友人と楽しくおしゃべりして何が悪いんですか!? 私は○○くんを好きですし、ちゃんと恋人しています! 部外者は口出さないでくださいっ」


 どうやら相当ヒートアップしているらしい。

 彼女と幼馴染が俺のことで喧嘩しているのすっごい恥ずかしいし、彼女に恋人してる、とか言われるの照れるからやめてくれ。


 人混みをかき分けて二人の元へ行くと、二人は口論をやめて俺を見る。


「おい、どうしたんだよ二人とも。ざっくり話は聞いたけど、別に彼氏持ちが男と話したらダメなわけじゃないだろ。それにそれをどう思うかは俺の問題であって、俺たち二人の問題だ。雪菜、お前には関係ないだろ」


 俺は彼女の肩を持つ。これは明らかに雪菜が悪い。

 幼馴染の彼女が浮気してるんじゃないかと俺を心配してくれての行動かもしれないが、それならもっとやり方があったはずだ。

 雪菜は驚いた表情で、大きな瞳をさらに見開き、茫然と俺を見つめ、ぽつりとこぼす。


「関係、ない……?」


 雪菜は、その場を逃げるように走り去った。


「あ、おい!」

 

「○○くん、あの子なんなんですか? 嫉妬?」


「……さあ」


 隣にいた彼女が難しい顔をしている。

 しかし、俺は雪菜が初めて見せた、深い絶望したような表情が気掛かりで仕方なかった。




 ☆☆☆☆☆☆



 それから一週間、雪菜とは一切話すことはなかった。

 雪菜は俺から意図的に距離をとっているし、俺自身ももっと違う言い方ができたのではないか、という後悔と、どう言葉をかけたらいいかわからなかったためである。


 そんな折、雪菜が学校を休んだ。

 仲のいい両親や、本人からも連絡はなく原因は不明。

 大丈夫かな、と思いながら授業を受けて家に帰ると、


「……来て」


 家の前に雪菜が立っていた。

 久しぶりにちゃんと顔を見たが、顔色はあまり良くなく、声のトーンも低い。

 ただ、雪菜から声をかけてくれたこと、俺自身も謝りたい気持ちはあったので、素直についていくことにした。


「入って」


 うちの家の隣が雪菜の家である。

 雪菜は扉を開けて催促する。


「ああ」


 俺が入り、そして雪菜が入る。靴を脱いでリビングに行く途中、後ろでかちゃ……と音がしたのを俺は聞き逃した。



「悪かった。小さい頃からずっと一緒にいて、俺のこと心配してくれたんだよな。なのに関係ないとか言ってごめん」


 開口一番、俺は謝罪を口にする。

 机を挟んで座る雪菜は、少しぼんやりとした表情で何も言わない。


「……あの場で、お前を責めるようなこと言ってごめん」


 最低だ。あの場面で雪菜の肩を持つことなど不可能なのに、彼女と雪菜、両方にいい顔をしようとしている。

 その自覚があったのに、沈黙に耐えられずに言ってしまった。

 自己嫌悪に陥っていると、雪菜が口を開く。


「……ホットミルク、飲みなよ」


 視線の先には小さい頃、二人で交換した、手作りのコップに注がれた好物ホットミルク。

 昔は雪菜のお母さんによく作ってもらっていた。


「う、うん」


 緊張で喉が渇いていたのもあり、少し甘めのホットミルクを飲み切る。

 それを見た雪菜が問いかける。


「本当に私があんたを心配した結果の行動だと思ってるの?」


 雪菜の細められた目が俺を捉える。


「……違うのか?」


 俺の返答に、雪菜は大きなため息をこぼした。


「ほんとに鈍いわね。……あら、どうしたの?」


「いや……ごめん。大事な話の途中なのに、すっごい眠くて……」


 意識が急激に遠くなる。


「いいの。肩貸してあげるからベッドいこ?」


「……ぅん」


 寝やすいところに連れて行ってくれるの……かな。

 俺はもう何も考えられず、雪菜のベッドに寝転んで、意識を手放した。




「くぁぁぁ……」


 すごく寝た気がする。

 鼻をくすぐるのは嗅ぎ慣れた匂い。昔は一緒に昼寝とかしてたよなあ。


「ああ、起きたのね」


 感傷に浸りながら、重たい瞼を開けると、黒の下着姿の雪菜が俺に跨っていた。


「っ!? な、ななな、なにしてんだ!?」


「本当に何も分かってないようだから行動に移そうと思って」


 雪菜はそう言って俺の頬を撫でる。


「私はね、あんたがずっと好きだったのよ。自覚したのは中学校から。気づきなさいよ。毎日毎日家に行ったり来てもらったりして。そんなの好き以外ないでしょ」


 雪菜が俺の顔の横に手をつき、顔と顔を近づける。


「いや……昔からそうだったし、やってること特にかわらな"い!?」


 ガリ、と首に噛みつかれた痛みに悶える。

 血が出そうなくらいの痛みだ。


「……そんなのはいらないの。私はあんたが好き。だったらあんたは私の気持ちに答えるのが筋じゃないの?」


「彼女がいるの知ってるだろ。雪菜が俺のこと好きなのはわかったけど、申し訳ないけど気持ちには答えられない」


 そう言って起きあがろうとするーーー

 ガチャガチャ……

 金属が擦れる音に合わせて、俺の手が止まる。

 俺の両手、そして両足が鎖でベッドに繋がれている。


「ふふ……。そう。彼女がいるから気持ちには応えられない、ね。いいわ。応えられないかもしれないけど……」


 ぢゅう、と噛んだ方とは反対側の首筋に雪菜の柔らかな唇がきつく吸い付く。

 ちゅ、と唇が離されると、そこにはキスマークが付いている。


「この休みであんたは私しか見られなくなる。そもそも私という長年一緒に時間を過ごした女がいながら他のメスに目移りするのが悪いのよ」


 ぺろり、と頬を舌が這う。


「快楽であたまをとろとろにして、こんなきもちいことできるのは私だけ、あんたを幸せにできるのは私だけっていうことをわからせてあげる。そのメスの匂いも全部消して、私の匂いをつけてあげる」


 綺麗な唇が歪み、頬は上気している雪菜の表情に、背筋がぞくり、と震える。


「来週には、誰が見ても私のオトコってわかるくらいにはなってもらうわ。……でも、私を拒否したんだから、その分のオシオキは覚悟して、ね?」


「ぅ……やめ」


「やめない。じゃあ、シよっか






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ヤンデレにどうにかされちゃう話 ACSO @yukinkochan05

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