あの顔は怖えんだよな
翌日、みずきが『
自分の小屋からこっそり皆の様子を覗き見る。
みずきはアニキたちと楽しそうに笑っている。
この後の帰り道で、『るぅ』が連れ去られて、あの笑顔が泣き顔に変わる。
今の俺にはどうすることもできない。
うん?? もうすぐ??
そっ、そうだ!
ここであいつらを引き止められれば、あんな事は起きないはずだ!!
「おーい、ゆりちゃんーー 俺、そろそろ帰るけど、元気でなーー」
タイミングよく『るぅ』ののんきな声がした。
慌てて小屋から飛び出して、ケージ越しに『るぅ』にしがみついた。
ダメだ!行くな!!
今行ったらお前は……いや、俺は……!!
「ちっ! ちぅ!! 行っちゃだめでち!!」
昔からの話し方が変えられなくて、まるで俺じゃないみたいな話し方になった。
のんきで馬鹿な『るぅ』は、『
ちっげーーーーよ!!
なに、鼻の下のばしまくっているんだよぉぉ!! そうじゃねえよ!!
一生懸命にあいつに手を伸ばしたが、その手が届く前にみずきがケージを持ちあげた。
キーキー鳴く俺に向かって、皆は軽く手を振って部屋を出ていってしまった。
なんて…… なんて無力なんだ……
しばらくして、みずきたちを見送った二人が部屋に戻ってきた。
懲りずにアニキの腕にしがみついていたヨーコを、やめろよと言ってアニキが突き放す。
「協力してくれたことに礼は言う。でも下心はないからって、そう言っていたのはお前だろう」
「あら…… そんなこと、私言ったかしら」
とぼけたふりをして、ヨーコはアニキから視線を逸らせた。
その視線が俺と合う。
きっと、ヨーコが『るぅ』をさらわせるのはこの後だ! そんな事させるもんか!!
ヨーコに向かってきーきーと抗議の声を上げると、こっちを見ていたヨーコの目が吊り上がる。
「ちっ!! たかがネズミのくせに!!」
アニキの目の前で、ヨーコが俺に向かってそう言った。
それを聞いたアニキが、鬼の形相になった。
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