ついてない
それは突然の出来事だった。
おおおおおお!?!?
これはなんだやめろ俺は何をされているんだあああああ…… むふっ
解放されてすぐに、自分の小屋に逃げ帰った。
うん、今回はちゃんとあの女の言った事を覚えているぞ。俺はまたチンチラに転生できたんだな。
しかし…… こ、こんなタイミングで『前世の記憶』を思い出したなんて、誰にも言えやしねえ……
小屋からそっと顔を覗かせて、『お相手』を確認する。
やけに偉そうにふんぞり返っているチンチラの頭には、見たことのあるモヒカンがツンツンと立っている。
あれ……以前の俺、だよな??
『前世の記憶』を取り戻す前の自分の記憶もきっちり残っている。
――チモシー美味しいでちぅ――
……あれも俺なんだよな…… 嘘みたいだ……
一応ごそごそと確認をする。うん、ついてない。格納もされていない。
すーはーすーはーと深呼吸をする。
よし、まとめよう。つまりはだな。
俺は今度はメスのチンチラに転生した。
そんでもって、あそこにいるのは俺の旦那で、しかも前世の俺。
しかも今は初めての『お見合い』が終わったところで……
ハッハッハッ って、それっていいのかよ!?
「リュウ」が「るぅ」になって惜しいと思っていたら、今度は「ゆり」かよ…… もう笑うしかねえ……
なんだか混乱してきた。
頭を抱えて小屋に引きこもっていると、ご主人様――アニキが俺のケージを覗き込んだ。
「どうした? びっくりしたか?」
そう言いながら、俺を慰めるようにドライフルーツを差し出してくれた。
ううーー、アニキはやさしいぜーー
アニキの手からもらったおやつをもぐもぐしていると、アニキはやさしく笑って俺の頭を撫でた。
……あの女は、言ったとおりに時間を遡って転生させてくれたんだな。
もうすでに俺はアニキに飼われているから、みずきに飼われるのは無理なんだな。でも以前の俺とつながりを持っていればみずきの様子もわかるだろう。
記憶を取り戻した時の混乱のせいか、俺は大事なことをすっかり忘れてしまっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます