だからチンチラにアレはやばいって
倉庫を出ると、ここはアニキの家の裏手だった。
ヨーコがどんなつもりだったのかわからねえが助かった。
ここからみずきんちまでは前世では良く通った道だ。ちゃんと覚えている。
アニキの家をちらりと見上げてから、まっすぐにみずきの家を目指した。
たかが車で30分、すぐ着くだろう。そう思った俺が甘かった。そりゃそうだよなぁ。車とチンチラの足じゃ比較にならねえ。
しかも、道には人間の時には思いもしなかった危険がいっぱいだ。
散歩中の犬には吠えられる。野良猫には追い回される。カラスまでもこっちをじっと見ている。怖え!!
ヤバ過ぎて表の道を走れない。草むらや物陰に隠れながら、こっそりこっそりとみずきんちまでの道を進んでいった。
あのコンビニが見えて、すげえ安心した。ここまで来ればもう少しだ。きっとみずきは俺の事を探している。
コンビニの前に繋がれた犬にワンワンと吠えられた。うおっと、あぶねえ。
「るぅちゃーーん」
ちょうどタイミング良く、みずきの声が聞こえた。
みずきーー! 俺はここだーー!!
一生懸命鳴いて見せるが、俺のキーキー声はみずきには届かない。
それどころか、みずきは俺の名前を呼びながら、びゅんびゅんと車が行き交う幹線道路を渡ろうとしている。
俺はこっちだ! あぶねえ! やめろ!!
でも俺の声じゃあ小さすぎて届かない…… そうだ!!
コンビニに居た犬の前に戻る。
ほれほれー いぬっころめ!
馬鹿にするようにケツを振って見せると、俺の姿に興奮した犬がギャンギャンとわめきはじめた。
あまりにも大きな鳴き声に、周りの皆が…… みずきもこっちを見た。
みずき!! 俺だ!! 俺はここに……
その時、ガチャンと何か鈍い音が聞こえた。
振り向くと、綱が解けて自由になった犬がこちらを睨み付けている。
や、やっべえ……
一目散に逃げだす俺! 追いかける犬!!
つ、ついてくんなーー!!!
「るぅちゃん!!」
みずきが俺を呼んでいるが、今はそれどころじゃねえ!!
俺を追う犬が飛び掛かってきたところを、ジャンプで華麗に避けた。
よっし、これなら……
キキーーーーッ!!
「るぅちゃんーー!!」
俺の耳に聞こえたのはブレーキ音とみずきの声。視界に飛び込んできたのは、トラックの大きなフロントガラスとその向こうに居る運転手の驚く顔。
あ、終わった。
激しい衝撃と共に、世界が暗くなった。
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