つまりはモヒカンのせいなのか?

「ったく…… こんなネズミのどこが良いのかしらね」


 そう言って、ヨーコは俺のケージを覗き込む。

 かと思えば今度はぎゃんぎゃんと、下っ端たちに向かってありもしないみずきの悪口を言い始めた。


 つまり、ヨーコはみずきにヤキモチを焼いていたらしい。

 みずきの手から俺をバイクでひったくったのはあの下っ端たちで。連れてこられたのはどこかのボロ倉庫の中だ。


 ってかよ、別にアニキとヨーコは付き合っていたわけでもないし、みずきがアニキに惚れていたわけでもない。

 もちろんアニキも別にそんな風な目でみずきを見ているようには思えなかった。


 アニキが見ていたのは俺の方だ。しかもやたらと、このモヒカンを褒めていた。

 今回のお見合いも、俺みたいなモヒカンのある子供が欲しいと、アニキの方から持ち掛けてきたらしい。


 そんなにいいのか?? このモヒカン。


 まあ、真実がどうであれ、ヨーコにはそうは思えなかったらしい。その結果がこういう事だ。


「やめろよ、ヨーコ! こんな事をしてもアニキがお前を相手にするわけはないぜ!」

 そう叫んでみても、キーキーとした鳴き声になるだけだった。


「うるっさいわね。 ほら、オヤツでも食べていなさい」

 そう言ってケージの隙間から押し込まれた団子からは、変な匂いがする……

 嫌な予感しかないぜ。


 確かに腹は減っているが、あれは食べちゃいけない。

 ぷんとそっぽを向いて見せると、ヨーコがチッと舌打ちをした。


 あいつらは俺が毒餌を食べなかったと言って、今度は始末をする役目を互いに押し付け合っている。

 あー、やっぱりアレ毒だったんだな。


 結局、俺の首を絞める事に決まったらしい。

 って、冗談じゃねえ。やられるかよ!!


 ケージの入り口から入ってきた下っ端の手に、思いっきり噛みついた!

「いってええ!!!」


 下っ端が手をひっこめたスキにケージから飛び出して、倉庫に積まれた荷物の間に隠れる。

 こういうボロい倉庫にゃ、どっかしら逃げられるような穴があったりするよな。


 みずきは俺の事心配しているだろう…… 探しているかもしれない。

 早く帰らないと。

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