隣からいいにおいがするうううう

 玄関のドアが開き、そこからひょこっと飛び出した顔に見覚えがあった。


 ヨーコじゃねえか!


 ヨーコも俺らの仲間の一人だ。でも何度かアニキにアタックしては振られていたはずだが。

 とうとう押しに負けて付き合う事になったのだろうか??


 「こんにちは。いらっしゃいませ♪」

 にっこりと笑うヨーコ。すげえ嘘っぽい……

 ヨーコのこんな大人しそうな姿、今まで見た事ないぞ。


 居間らしき部屋に通される。

 そこでは普通の人っぽい大人しい服装のアニキが待っていた。

 な、懐かしい…… そして、カタギのふりをしているのが似合わねえ。ウケるわ。


 たまらずケージをバンバン叩いていると、みずきが「どうしたのー?」と覗き込んできた。

 おっと、今日は見合いだったよな。イカンイカン。


 気を取り直して、じーっとアニキを見つめる。

「可愛いですね」

 俺を見てにっこりと笑った。うおおお、アニキのその笑顔は、むしろ怖いぞ!

 でもやっぱり、俺の事はわからないみたいだ。


 アニキ―! アニキ―!!

 呼んでみても、口から出るのはキーキーとした鳴き声だけ。

 一生懸命、ケージから手をだして振ってみたら、ニコニコしながらアニキが俺の手を握った。

「はい、握手♪」

 ちっげえよ。


 えーっと、えーっと……

 こうなったら尻文字だ!!


 ア(ふりっ)二(ふりっ)キ(ふりっ)!

「ぷぷっ。この子、本当に可愛いですね」

 ……ウケた…… いや、そうじゃない。

 見ると、ヨーコも笑ってやがる。くっそーーー!!


 どうしたもんかと考えていると、ケージごと居間の隅に連れて行かれた。


「はい、お嫁さんだよー」


 そう言われる前に、俺の鋭い嗅覚はメスの匂いを捉えている。

 並べられた隣のケージには、何度も見かけたあのかわい子ちゃんが!


「ちぅ!」


 ゆりちゃんんんんん!!!!

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