アニキと思い出の道

 飼い主のみずきが見せてくれた動画の中にいるのは、まん丸のくりくりお目目の可愛いチンチラ。

 ひくひくと鼻を動かしているかと思うと、今度はくしくしと両手で顔を撫でまわしている。その仕草がやたらと可愛く見える。


「お名前はゆりちゃんって言うんだよ♪」

 ナニソレ、名前まで可愛い。


 前世が人間の俺に、チンチラの魅力がわかるのかとちょっと不安だったが、今の俺はとてつもなく気分が盛り上がっている!! 盛り上がっている!!

 気分を落ち着ける為に、みずきの胸元に顔を挟んでみた。よし、もちろん落ち着かない。

 ふふふ、今日はいい夢見れそうだぜ……


 しっかし、まさかアニキとこの姿で会う事になるとは……

 さすがにアニキにゃ俺の事はわからねえよなぁ。


 * * *


 運命の日は来た。


 この時の為に、今日は朝からしっかり砂浴びしてきれいにして、念入りに毛づくろいもした。

 イメージトレーニング()もバッチリ!!


 俺はお出かけ用ケージに入れられたまま、みずきの親父さんの運転する車に乗せられた。

 どうやら、これでアニキの家に行くらしい。


 このバッグは、外が見えるような窓がついている。

 チンチラの低い視点からだから、窓の外はチラリとしか見えないが道路の標識でなんとなくだけど、今いる場所がわかる。


 この道を通るって事は、みずきんちってあのあたりじゃねえか?

 うんそうだ。アニキたちとドライブした時に、よく寄っていたコンビニの近くだ。

 アニキんちはそこから30分くらいのハズだから、結構ちけえよな。


 そんな事を考えながら、外の風景を眺め昔を思い出すうちに、懐かしいアニキの家に着いた。

 駐車場に見覚えのある真っ黒い車もとめてある。アニキの車だ間違いない。


 親父さんが玄関のチャイムを鳴らすと、部屋の中からはーいと女の声がした。


 うん? なんでだ??

 アニキは独り身のはずだぞ??

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