閑話 八つ当り
分体が殺されたことで、意識を分体に写していたリグレスの本体が目を覚ます。
いくら分体で力が弱まっているとはいえ簡単にヤラれてしまい悔しさを隠せないリグレス。
「あー、もう、腹立つなー、あの冒険者崩れは使えないしさ、あーもう、折角の綺麗な人形も手に入らなかったし、この苛立ちをどうすれば良いんだよ」
ひとり愚痴を呟くリグレス。
その目の前に留まったのは、虚ろな表情のまま動かないカトレーヌの姿。
「アハッハッ、丁度良いや、あのへっぽこ冒険者が失敗したからさ、責任取ってもらわないとね」
処女にしか性的な興味の無いリグレスだが、それとは別に綺麗な女をいたぶる趣味も持ち合わせていた。
その為、人質として手元に残していたカトレーヌは、その絶好の対象と言えた。
「そうだな〜、偶にはペット達も労って上げないといけないし、丁度繁殖期で気が高ぶっているから丁度良いや」
相変わらずヒトリで喋るリグレスは、不機嫌から一転して楽しそうに、カトレーヌに命令してダンジョンの一室まで付いてこさせる。
部屋には魔術による封牢が形成されていた。
リグレスが「パチン」と指を鳴らすと封印が解かれ牢の扉が開く、中には人間に近い獣人族というよりは、より獣に近い二足歩行の生き物が唸り声を上げ威嚇していた。
「おいおい、御主人様に向かって唸るなんて、また躾け直さなきゃだめなのかな」
リグレスが冷たい眼差しでケダモノ達を見る。
するとケダモノ達は怯えて大人しくなり、声を上げなくなった。
「アハッハッ、いい子達だ。だから今日はご褒美を連れてきたぞ」
そう言ってリグレスはケダモノ達の前にカトレーヌを差し出す。
とたんケダモノ達は興奮したように騒ぎ出す。
「そうか、そうか嬉しいか。どうだ僕は良い御主人様だろう」
リグレスの問い掛けに、多少は知性があるらしいケダモノ達が頷き吠える。
「…………」
そんなケダモノ達のたぎる視線にさらされてもカトレーヌは虚ろな表情で恐怖すら見せない。
「じゃあ、そこの女、命令だよ、この子達の相手を喜んでしてやってくれ、もちろん雌としてね」
リグレスからの命令を受け取ったカトレーヌは躊躇なく衣服をはだけると、ケダモノ達の前へと自ら進み出て挑発するように誘う。
もともと理性など無いに等しいケダモノ達は我先にとカトレーヌにむらがりその肉体を味わおうとする。
「はぁ、やっぱりケダモノは品が無いな〜、みっともなく腰を振っちゃって、あはっ、女の方も嬉しそうにくわえ込んじゃって、これは相当の好きものだね」
ケダモノ達に蹂躙されながらもリグレスの命令に従い嬉々として受け入れるカトレーヌ。
一匹の雌に成り果て数多の雄を迎え入れる。
「クククッ、そろそろ頃合いかな」
リグレスはケモノ達の交じり合いをしばらく観察しながら頃合いを見て指を鳴らす。
すると呆けた表情でケダモノ達の相手をしていたカトレーヌの瞳に理性の光が戻り始める。
『えっ、なに? どういうこと』
口が異物で塞がれ、声を発することが出来ないカトレーヌはパニックに陥り暴れ始める。
突然抵抗し始めた雌に、雄としての本能が刺激されより強く服従させようとケダモノ達がより激しく動き始める。
『なんで、私が、こんなめに、いや。いや、イヤー』
苦悶の声さえ上げることが出来ず、心の中で叫び続けるカトレーヌ。
「アハッハッ、いい表情だ。絶望に満ちたその顔、本当に処女じゃないのが勿体ない位だよ」
心底楽しそうにカトレーヌを見るリグレス。
そんなリグレスにカトレーヌが慈悲を願って手を伸ばす。
「えっなに? 穢らわしいから触らないでくれる。まったくちょっと褒めたら調子に乗って、まあしばらくはその子達の相手をしといてあけてよ、大丈夫殺しはしないからさ……でも、まあ、そいつらの子を孕む可能性はあるけどね。アハッハッ」
リグレスは笑いながら、ケダモノ達に殺さないように命令だけし、再び部屋に封印をしてその場を去る。
部屋に残されたカトレーヌの表情は既に魅了が解けたのにも関わらず虚ろなモノに戻っていた。
「ふう、これで少しは気晴らし出来た出来た」
相変わらずヒトリで喋るリグレス。
「……それに、そろそろ本命が来てくれそうだしね。楽しみだな新しい僕の花嫁」
ひとり呟くその表情は見た目からは想像が、つかない欲望に滲んだ悍ましいモノになっていた。
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