第38話 初めての経験

 野槌の異形種を倒し。

 ご褒美のトレジャーボックスまで獲得した真紅郎達。


 法禅が魔術で罠を有無を調べ問題ないことを確認する。


「なるほど、これが噂のダンジョンのみに発生するという宝箱なのですね」


 まるで年頃の少女のように目を輝かせるマチルダ。


「もしかしてマチルダ殿は初めてで御座るか?」


「ああ、ダンジョンには潜った事があるのだが、その時は残念ながら巡り合わせが悪くてな」


「ならば何事も経験。未知への扉開いて見たいとは思わぬで御座るか?」


 真紅郎も初めて宝箱を開ける時の期待感を思い出し、その時の感動を味わって欲しいと、純粋に思っての発言だった。


「なんと、良いのか? こんなおっきなモノ……その、物凄くドキドキするのだが」


 そう言ってマチルダは恐る恐る初めて目にするお宝に触れる。

 マチルダも噂には聞いていた、希少価値によって大きさや色が異なる事を、そして初めて目にしたそれは間違いなく大物の分類で見ただけでも分かる立派さだった。


「うむ、遠慮せずに行くで御座るよ」


 真紅郎に後押しされマチルダは未知への領域に一歩踏み入る覚悟を決める。


「……なら、ここは思い切って。えい!」


 普段の立ち振る舞いは騎士として凛とした振る舞いのマチルダだが、初めての事に少し緊張していたのか思わず可愛らしい事が出てしまう。


「あの、こっ、これはどうなのだ? 私は上手く出来たのだろうか?」


 自分の手際に問題なかったか心配になるマチルダ。もっとも誰が開いても中身の価値が変わる訳では無いのだが、それでも初めてのマチルダは不安になっていた。


「おお。これは、これは」


 マチルダの隣で中身を確認した真紅郎が声をもらす。


「おお、四つじゃないか、こりゃあ当たりだな、ガッハハハ」


 法禅も中身を見て笑みを浮かべる。


 そんな三人を少し羨ましそうに眺めるアーウィン。


 それに気付いた真紅郎が気を遣って話しかける。


「アーウィン殿も次に宝箱が出たら開けてみるで御座るよ」


「ふん、俺は騎士だ冒険者じゃないからな、要らぬ気遣いだ」


 素直に頷けないアーウィン。

 ヤレヤレといった感じでマチルダが苦笑いする。


「ガッハハハ、青い、青いな、これが青春か?」


『ちがうわ』

『いや、全然違うで御座るよ』


 法禅の言葉を心中で否定する真紅郎とアーウィン。この時だけは考えてることは同じだった。


 そんな場の空気を払拭するかのようにマチルダが尋ねる。

 

「ところで、このアイテムはどうするのですか?」


 手に入れたアイテム。


 きんのこづち?

 ふるいかたな?

 ふるびたこいん?

 まきもの?


 そんな中から、真紅郎がひとつの提案をする。


「ふむ。今回の戦いではにアーウィン殿が攻撃を防いでくれていたから事の勝利。一番に選択して良いと思うで御座る」


「おお。確かにな、に頑張ってたからな、それで良いと思うぞ」


「私もお二人が宜しければそれで構いません。アーウィンもながらも守護者としての底力を見せてくれましたし」


 そう言って、いきなり三人から褒められたはずのアーウィンはなぜか少し意気消沈した様子で答える。


「もともと宝目的じゃないからな俺は余り物で良い」


 アーウィンのその言葉から、直ぐに法禅がアイテムを指定する。


「なら、ワシはこの[まきもの?]で良いぞ」


「では、拙者はこの[ふるいかたな?]を頂きたいのだが、マチルダ殿は宜しいか」


「あっ、えっと、それでしたら私は[きんのこづち]で構いません」


 それぞれがアイテムを指定する。


 結果的に、何でも良いと言った割に手にしたのが[ふるびたこいん]だったのでアーウィンは少し落胆した様子だった。

 

 法禅は鑑定魔術は使えないため、不確定品のまま持ち帰ることにし、四人は最下層へと足を進めた。



 最下層についてから封印の間までは残念ながらトレジャーボックスのドロップは無く。

 マチルダが自分だけ宝箱を開けた事に対して、申し訳無さそうにアーウィンに謝る。


「いや、俺は別に宝箱なんてどうでもいいし」と、アーウィンは強がるが、どこか期待している節は感じられた為、真紅郎としても申し訳無い気持ちになる。

 

 しかし、トレジャーボックスの出現率に関しては完全に運次第なのでどうしょうもない。


 そんなやり取りも封印の間に着くとガリと変わる。


 神妙な顔をしたアーウィンが封印塚を見て呟く。

 握っていた拳に力を込めながら。


「ここでメルセディア様が……」


 マチルダは周囲を見回し封印塚の状況を確認する。


「ここに簡易の祭壇を建てても?」


「ああ、構わんぞ、ただし封印塚には絶対に触れるなよ」


 法禅から許可がおり、マチルダはアイテムボックスから簡易式のこじんまりとした祭壇を取り出す。

 アーウィンもアイテムボックスから花を取り出すと祭壇に捧げる。


「その花は?」


「メルセディア様が好きだった花だ」


 アーウィンの言った通り、それはメルが真紅郎に好きだと言っていた匂い紫と呼ばれる甘い香りがする花。


 その花と共にローランフォード式の祈りを捧げるアーウィンとマチルダ。


 法禅は油断なく二人を見る。

 変なことをしないようにと。


 真紅郎は少しだけ申し訳無い気持ちになりつつも、同様に不審な動きをしないか見張る。


 そして二人は、何事もなく祈り終えると、片付けを始める。


 特に問題なかった事に安心する法禅と真紅郎。


 そんな二人に片付けを終えたマチルダが問い掛ける。


「それで、本当の聖女様は今どこに居るのですか?」


 予想していなかった問いに法禅は怪訝な表情を見せ、真紅郎は……動揺すること無く冷静な眼差しでマチルダを見るのだった。




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短編です。


エロエロ注意です。

エロコメですのであまり深く考えないで読んで頂けたら嬉しいです。



【幼馴染で恋人だった僕よりイケメン先輩を選んだはずの彼女が一週間後身も心も限界になって戻ってきた。】


https://kakuyomu.jp/works/16817330658556905565

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