幕間 セキララ女子トーク(メル視点)

 今日、パーティメンバーになった葵さんと彩女さんとで、お店の予約がてらに甘味を味わう。

 今まで聖女としての立場から友達のような存在はおらず。

 アデル達のパーティに居たときもリリアンヌとカトリーヌとは折り合いが悪かった為、一緒に出かけるようなことは無かった。


 だからこんな他愛もない話をしながら食べるデザートがこんなに楽しいことも知らなかった。


 もし、旦那様と結ばれる事がなければ知りようの無かった世界。


「あの、メルさんは真紅郎さんとどこで知り合ったんですか?」


 だから彼女達からこんな質問されてドキドキしながら話す感覚も初めて。


「ふっふ、あのですね旦那様とは同じパーティにいた事がありまして。その今考えると一目惚れってやつだったのかもしれません」


 そう初めてあった時。凄く綺麗な赤い髪と精悍な顔立ち。どこか人を寄せ付けない孤高な雰囲気。そのせいかリリアンヌとカトリーヌは怖がっていたっけ。

 でも、私が感じたのは体に電気が走ったような不思議な衝撃。

 今まで数多くの人と出会ってきたけど、その中の誰一人として感じたことの無かった感覚。

 

 まあ、あの独特の口調とのギャップにビックリしたけど。慣れてしまえば味があるし……。


「……メルさん、すっかり自分の世界に浸ってる」


「うん、あの美貌から信じられないだらしない顔してる」


 そんな二人の言葉に現実に引き戻される。


「いや、違うの旦那様の出会いを思い出したらつい」


「ふっふ、メルさんって本当に真紅郎さんの事が好きなんですね」


「葵も人のこと言えない。キョウ君との雰囲気一変してた」


「ふむふむ、それはそれは、あれですね」


 宿屋で少し話していたけど、恐らく響之介君と一線を越えたのだろう。

 からかわれる一方なのは嫌なので意趣返しとばかりに彩女さんの言葉に便乗した。


「はあ、葵もついに一人前の女になった。先を越されたようで悔しい」


「もう、別に早ければ良いってものでもないよ」


 葵さんが感慨深く答える。


「そうですよ彩女さん。価値感は人それぞれでしょうが、私は初めてが旦那様で本当に良かったと思ってます」


「うん、その……私も初めてをキョウに捧げられて良かったと思ってる」


「……二人共、甘ったる過ぎ。でも、少し羨ましいし、色々気になる」


 上目遣いで窺う表情を見せる彩女さん。

 きっとシスコンの隼人さんなら悶絶していた事でしょう。

 かくいう私も少しお姉さん振りたくて余裕のある感じで応じてしまう。


「なに彩女さん。何が気になるの?」


「うん、じゃあ最初の質問……初めてが痛いってホント?」


 そして尋ねられたのが色恋の延長線上にある、生々しい質問。


「あっー、えっと、確かにかなり痛かったですね。その葵さんはどうでしたか」


 誤魔化せずバカ正直に答えてしまい、情けなくも気恥ずかしくなって葵さんに話を振ってしまった。

 しかし葵さんは平然とした様子で答える。

 響之介君の前ではあんなに照れ屋なのに女子の中でこういう話をするのには抵抗がないらしい。


「えっ、私ですか、そうですね痛かったですし、今も違和感ありますけど……」


「けど?」


 葵さんの含みのある言い方に彩女さんが聞き返す。


「一つになったときの喜びのほうが勝って、痛いけど幸せな……そんな感じかな」


「あっ、分かります葵さん。私も身も心も旦那様と一つになれたと実感出来たときは、痛みも吹き飛ぶほど幸せでしたよ」


 思わず葵さんの言葉に共感して盛り上がってしまう。

 そんな私と葵さんの様子を見ていた彩女さんが一言呟く。


「もしかして……二人共、ドM?」


「ちがいます!」

「ちがうわよ!」


 すぐに私と葵さんが否定する。

 彩女さんの思わぬ言葉に反撃とばかりに葵さんが言葉を続ける。


「まあ、こればっかりは体験しないとねー」


「うぐぐっ。葵、上目線」


 効果はあったようで悔しがる彩女さん。

 きっと聡い彼女なら大丈夫だと思うけど、それでも彼女が間違った方向に暴走をしないよう、私は私の思いを伝えてみる。


「まあまあ、彩女さん最初に葵さんも言いましたが早ければ良いというものでもないと思いますよ。個人差はあると言いますが、痛みが伴うからこそ最初は本当に好きな人と結ばれて欲しい。残すなら、痛いだけの思い出より、やっばり好きな人との幸せな思い出の方が良いじゃないですか」


 それは聖女としてではなく、ごく普通の、愛する事を覚えたただの女としての言葉。


「ふぅ、もう……メルさんに、そんな幸せそうな顔で言われたら、私もそうなりたいなって思っちゃうですよ」


 とうやら少しは思いが通じたらしく彩女さんが笑って応えてくれた。


 きっと心配しなくても、この少女にもいずれ素敵な恋が訪れることだろう。




 たぶん……あのシスコンのお兄ちゃんが邪魔をしなければ、きっと。






―――――――――――――――――――


読んで頂きありがとう御座います。

☆1000突破の感謝を込めた

SSというかSSS(ショートサイドストーリー)を差し込ませて頂きました。


if展開でもっとはっちゃけた話も考えたのですか時期尚早と判断し無難に纏めさせて頂きました。



 何分、即興で書き上げたのでお見苦しい点があるかもしれませんが少しでも楽しんで頂ければ幸いです。


改めまして

数多くの応援ありがとうございます。


本編の続きは今日の18時頃にアップさせて頂きますので、そちらも引き続き宜しくお願いします。

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