第13話 酔いの席
四人ともに程よくお酒が回り、互いに壁が薄れ始める。それにより少しづついい意味で遠慮が取り払われていく。
「真紅郎さん。俺あの試合を見て、本気で、剣の道を志すことを決めたんですよー」
顔を赤らめ響之介か熱心に真紅郎へと語りかける。
その横でツリ目が印象的な葵の目がとろんと下がり気味になり、メルへと先程から色々な質問を繰り返していた。
「メルさん。どうしたらこんな綺麗な肌になるんですか、しかも髪もサラサラのツヤツヤで、美容の秘訣を教えてくだいよー」
「
メルは葵の問いかけに一度考えて答えを告げる。
事実、アデル達と冒険者として過ごしてきたため、野宿なども多く入浴などこまめに出来ない。それにも関わらずメルは一度たりとも薄汚れた姿で人前に姿をさらしたことはない。
これは聖女として常に心身共に清廉であれとの教会側の教えもあるが、メル自身もかなりの綺麗好きな事が要因としてある。
そのため、メルはかなり高い頻度で自身に【
結果としてそれが衣類だけでなく体の老廃物を除去するデトックス効果に繋がっていた。
「えー、私も
「そうなんですね……因みに葵さんは
魔術にはその組み上げた
「私の場合、恥ずかしながらコモンはまだノービスでして。そのメルさんはもしかしてマスターですか」
「いいえ、ハイ・マスターです」
「えっ!? ハイマスター?」
葵は初めて聞く術式ランクに驚きの声を上げる。
その反応に、メルは内心でバカ正直に答えすぎたと後悔し直ぐに訂正する。
「葵さんが言った通りだったので『はい、マスターです』と答えたのですよ」
「えっ、でも最初否定していたような……てっ、そんなわけ無いですよねー、アハハ……マスターランクより上なんて聞いたことありませんし……」
これは葵が聞いたことが無いだけで、実際にはマスターの上にはハイ・マスター、グランド・マスター、さらにはその上も存在するとされている。
ただ、そのマスターランクより上位の位階に到達できたものはごく少数である。
つまり本来の位階を示してしまうと身元がバレてしまう危険性があることを思い出し、メルは慌てて誤魔化したのだ。
「はぁ、凄いなー。私と歳もそう変わらないはずなのにマスターランクの術士なんて……メルさんみたいな人が私達のパーティにいたらなー」
「俺だってさ、只者じゃないって、そう思って声掛けさせてもらったんだよー、そしたらまさかの真紅郎さんのフィアンセだったなんて」
「はぁ、アンタの場合手当たり次第に声を掛けてただけじゃないの?」
横から口を挟んできた響之介に葵が絡む。
「そうでも無かったですよ、ギルドでは周囲を確認して真っ直ぐ私のところへ勧誘しに来ましたから」
「そうなんですか? へぇ、メルさんの実力を感じ取るなんて凄いじゃん」
メルが響之介をフォローすることで葵が感心する。
「まっ、まあね……でも、やっぱり、そうそう腕の立つ術士なんていないよなー」
「ふむ。響之介殿のパーティは術士が足りないで御座るか」
「はい、魔術使えるのは私くらいで、さすがに一人で攻撃と補助の両輪は厳しくて」
「そうですね……私が昔いたパーティでは私が補助でもう一人が攻撃役と分担してましたし、術士が二人いると助かるのは確かですね」
「ですよねー。はぁ、ちゃんと見つけてよね」
「あっうん頑張るよ」
葵の言葉に自信なく答える響之介。
そのやり取りを聞いていたメルが呟く。
「その旦那様。何とかお力添え出来ないものでしょうか?」
加入出来ないのはメルの責任ではないのだが、親しくなったことで、気持ち的に申し訳なってしまったメルが真紅郎に相談する。
「……そうで御座るな。これも何かの縁で御座ろう。ギルドの陽花殿に口利きしてみるで御座るよ」
「ほっ本当ですか」
響之介の言葉に思わず真紅郎に詰め寄る。
「響之介殿達は最近イズモに来たばかりで御座ろう。まだそこまでスタッフとも信頼関係を結べてないはず、その状況ではメンバーの斡旋もしにくいで御座るからな」
「その、ありがとう御座います。メルさん、真紅郎さん」
葵も真紅郎の言葉に喜びを隠せないのか隣のメルの手をしっかり握りてシェイクする。
「では、早速明日、話してみるで御座るよ」
真紅郎としては一度実家に戻りメルを紹介し、婚礼の儀を済ませて、メルと正式な夫婦となるのが最優先にしておきたい事なのだが、オロチの件もありイズモから直ぐには離れられない。
乗りかかった船ではないがオロチの件が落ち着くまでは響之介達の力になるのも悪くないと思っていた。
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