第9話 信じていないものがみた

 さて、いい感じに家庭が形になっているようじゃが、ここらでいたずらをしてみるのも悪くない。

 雨降って地固まるともいうしの。

 ☆☆


 帰った来る途中の道で声をかけられた。

「すみません」

 女性の声。

「この時間で外に出るのは危ないですよ」

「そうですね」

 バサッ、何かを顔にかけられる。


「何をするんだ!」

 かおをぬぐって目を開けるとそこには誰もいなかった。

 街灯に駆け寄ってみると砂のようだった。

 Yシャツの中までじゃりじゃりしている。

「なんだ?」

 寒い。はやく帰りたい。

 そして妻になり、身重になった彼女の声を聴きたい。

 バサッバッサ。

「砂?」

 払っても払っても出てくる砂。

 なんで今日に限って変なものに出くわしたのか。

 今日はスーツである。写真を撮らないといけない用事もあったから素材の1番いいスーツに靴にネクタイである。

「最悪」

 妻の仕事を一つ増やしてしまった。

 クリーニングでの値段がそれほど高額にならないければいいのだけれど。


 玄関前の明かりでできるだけ払ってみる。

「まだ出てくるのか」

 家の中まで砂利で汚したくない。近所迷惑と思いつつ、バサバサと上着をはたく。

「あなた、近所迷惑よ」

 パジャマ姿で出迎えてくれた妻。赤子の世話はしんどいようで

 フラフラしている。

 頑張ってくれている彼女に感謝だ。

 夜泣きが聞こえているから今更衣服のはたくことくらいでは迷惑にはならないだろう。



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