第5話再び神社へ参拝

 座敷わらしさんの提案通り、週末は神社へ行ったみた。

 今度は5円玉と500円玉、そしてお神酒持参である。

 朝7時、散歩の人がチラリホラリと行きかう頃。


「かなり早くてごめんなさい」


 チャリンチャリン。

 お神酒を捧げて

 手を合わせる。


 まだまだ早いから参拝客もいない。

 なのでざっと覚えた般若心経を暗唱する。


 昨日ばっちり予習してきたので、前回よりもあっている場所は増えたはずだ。

 暗唱を呟き終わったところで、参拝客と思しきおばあさんに出会った。


「感心だね。偉いお嬢さんだ」

「ありがとうございます」


 軽く会釈を済ませて立ち去る。

「ウフフ、あなたって興味深いわね」

「え?」

 さすがに外だし、問い詰めるわけにいかない。

 参拝客から十分に距離をとり、周りを見渡し人がいないことを確認してから問う。

「カッコ、変じゃないわよね」

「うん」


「神様と対話は良いの?」

「あ、ちょっと行ってくるね」


「それじゃ、私は駅に向かうわね」

「はーい。終わったらあなたの家に戻るから。デート楽しんで!」

「うん」

(朝早かったけれども大丈夫だったかな?)

 まだ時間がある。

 時間的にも余裕はある。少し歩かないと、筋肉が固まってしまう。

 最近、おなか回りが気になる。

 PC仕事ばかりで体がなまるのだ。

 彼に会うまで今しばしの運動だ。

 あまり化粧が崩れないように汗を拭きながらゆっくりと歩いていこう。


 ☆☆

 待ち合わせ場所についた。お手洗いで、メイクなど身支度をしてきた。

「これで良しっと」

 彼が歩いてきてキョロキョロしている。

 また彼の姿を探せる日が来るなんて夢のようだ。

「おはよ」

 彼は振り向くと笑ってくれた。

「よっ。ひさしぶり」

「うん」


 駅前で待ち合わせして、カフェに行って、カラオケ行っている。

 懐かしい。学生によくいったデートルート。


 社会人になってからこんな時間持てなかった。

 お互いの今の仕事のこと、これまでのこと、いろいろなことを話し合った。

 離れていたのは9年ぐらいになるから話は尽きない。


「ねぇ、なんで今連絡してきたの?」


 本題はそこだ。

 以前といっても学生の時ではあった。1年ほど付き合っているからどんな人かは知っている。女に遊び惚けているというわけではない。

「奨学金は返し終わったの?」

 バイトだけの生活で擦れ違いで別れることになった過去。

「もち。きっちり返済して自由になったから」

「そう」

「それに、奨学金だけじゃなくて」

 何か言葉を探しているようだ。

「もっとお前にふさわしい相手、いるんじゃないかって思ってたよ」

「なんで?」

「俺は子供が欲しくなかったし、欲しいというお前にはちょっと違うんじゃないかと思っていた」

「この年までいい人いなかったから、多分産めないよ。そうしたら貰ってくれますか?」

 冗談交じりに言ってみたのに彼は肯定してきた。

「ああ」

「言っている意味、わかってる?」

「忙しいのに、懐かしいからだけでこんなに時間割くかよ」

 価値観のすり合わせは終わったようだ。

「これからよろしくね」

 座敷わらしは幸せを運んできた。


「あ、そうそう。年収も結構な額になってきたから二人なら悠々自適に暮らせるよ」

「ええっおいくら万円で?」

「んー、年収四ケタ万円!! いいだろ~」

 にかっと笑う彼。頼もしい限りである。


 本当に座敷わらしは幸運をもたらしてくれる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る