引退した殺し屋の老人と、その彼にもう一度仕事をさせたい暴力団員たちのお話。
アンダーグラウンドな社会を描いた現代もののドラマです。
伊達に殺し屋は登場しておらず、とにかくバイオレンスっぷりが凄まじい。
圧倒的な暴力性もそうなのですけれど、特に好きなのがその命の軽さ加減。
わりとこう、物語的にしっかり主要な立場にいると思われた人物が、でもあっけなく死んでしまうこの感覚。
どこかパルプ的な作品の情け容赦のなさのような、この物語世界の力学が最高でした。
殺し屋のおじいちゃんがとても格好良かったのですけれど、個人的に好きなのはやっぱり主人公。
一人称体ならではというか、文章の細部から彼個人の人間性が伝わる感触がとても好き。
どうにも危なっかしいというか、彼のいまいちダメそうな感じが、その思考の筋道をなぞることで読み取れてしまう。
この読み味そのものに感じる心地よさ。良い……。
情け容赦のないバイオレンスな世界なればこそ、何か語られない悲哀のようなものが浮き立つお話でした。