STAGE3.Lungs

 いつも通り『STAGE3.Lungs』とテロップが出るのはいい。だがこれはどういうことだろう。

今までステージは何かしら僕の過去の思い出に根差すものだったが、今回は全く無関係。どころか延々と赤黒い世界が続いていて実に気持ち悪い。このゲームは一々絵面が酷いのに、背景までセンス崩壊されては堪ったもんじゃない。

が、愚痴っていても見た目が可愛い全年齢ゲームに変化するわけでもない。諦めて周囲を見回すと、

今回の雑魚敵は何やら、コアが幾つも幾つもくっ付いた葡萄みたいな見た目をしている。今は別にいいが、後々これが『GOD:K』として出て来た時のことを考えると憂鬱だな……。そんな憂鬱を吹き飛ばすべく引き金を引いたのだが、


レーザーが命中したにも関わらず、雑魚敵が今までと違い一発で倒せない。


「何っ!?」


そいつは周りに中央が凹んだ赤い円盤状の攻撃を展開する。僕が慌てて二発目を打ち込むと、なんとかそれを発射される前に奴は溶けて消えた。


まずい! 今度は攻撃力が下がっている! 移動速度が下がるというシューティングにおける防御力の低下を『攻撃は最大の防御』で補おうと思えば今度はそれをいで来る、容赦が無さ過ぎるぞANNRAKU!


しかし怒ってはいけないし、考え過ぎてもいけない。前回はそれで一度やられているのだから冷静になれ。要は二発打ち込めばいいだけのこと。

僕は雑魚敵に対してレーザーを撃つが、これが中々キツい! なんたって連中は一体が攻撃を複数展開して、それをガトリングのように打ち付けてくる。正面からやり合ったら普通に危険だ。そしてこいつらはボスではない。当然周りに何体も何体も現れるので、僕は弾雨に晒されるというわけだ。

一気に難易度が上がり過ぎだぞ! 僕は堪らず力尽きた。



『CONTINUE?』


目の前のテロップを見て考える。正直急にクソゲー化してやる気が削がれた面は無いでもないが、難易度に加えてステージの雰囲気もゴロっと変わったのだ、もしかしたら結構重要な局面まで来ているのかも知れない。

そう考えると俄然やる気が湧いて来た。僕は再度戦いに舞い降りる。

正直ステージ二つクリアしたらゲームも後半とは中々ボリューム不足感もあるが、長々続いても困るのでまぁいいだろう。



 即座にリスポーンして攻略を再開する。正直ここからはトライアンドエラー、物量作戦、とにかく死体の山を築きながら少しずつ少しずつ前線を押し上げる。

正直何度も力尽きるのは気持ちがダレてくるが、引き下がるとここまでの気持ちが報われないと自分に言い聞かせて地獄のような道を行く。そして、



『BOSS STAGE』のテロップも見慣れたものだ。今回の『GOD:K』は……、


なんだ? 今までと違って、単なる雑魚敵の巨大化じゃないぞ? 三角形? 楕円? な形をした耳か翼かみたいなものが、ここは相変わらずのスキンヘッドの左右に装備されている。

そいつは高い位置をふわふわ浮きながらこちらを見付けると、口で大きく息を吸い込んだ。それと同時に左右のパーツも膨らんでいく。……こいつのスキンヘッドがまともに稼働しているの初めて見たな。

そんなことを考えていると、そいつはフーッと口から竜巻を吐き出した。


「おっと!?」


吐き出された竜巻は地面に縦に着地し、グネグネと蛇行しながらこちらに飛んで来る。

やっと物理攻撃じゃなくなったのはいいが、こいつは避けるのが難しい! 蛇行してくるから回避しなければ行けないのか、棒立ちの方が当たらないのかの判別が難しい。その中で結構なスピードで迫るそれを、そこそこ連発するのだからじっくり考えている暇も無い。これはまた死にゲーになりそうだ……。


竜巻、合間の急降下体当たり。何度HPが尽きただろう。最早もはや目の前の敵より『CONTINUE?』のテロップに怒りを覚えながら引き金を引く内に、

オオオオオオン、と謎の呻き声を上げて『GOD:K』が地面に墜落する。長かった、本当に長かった。しかし無情なる『STAGE CLEAR』からの『ステージ ヲ コウチクチュウ デス』。少しくらい休ませてほしい。

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