STAGE2.Arms
目の前に『STAGE2.Arms』のテロップが表示されると共に、目の前に大きな美術館が現れる。
ここも前回同様僕の思い出の場所だ。中学の美術部時代、一度だけ絵が入賞してここに飾られたことがある。あの時は本当に嬉しかった。まぁまともに成果が上がったのはあの一回だけ、とても絵でやっていける才能は無いと高校卒業と共に筆を折って違う道に進んだのだが。
……今振り返れば僕には他の才能の方が恐ろしく欠如しており、あのまま絵を続けていればどうなっていたのかな、と思わなくもないけれど。
そんなことより問題は目の前のANNRAKUだ。あちこちにさっきの敵の、脚が腕になったバージョンの敵がわんさか出現する。
さっきと違って高速で迫ってくることはなさそうだな、と多少気楽に構えていると、
「マジかよ!」
連中、自分の体格より幾らもデカい紫色のエネルギーの塊みたいなのを頭上に持ち上げている。
そしてそれを放物線で放り投げた。
だが、見た目のインパクトに対して攻撃は放物線なので、余裕はある……、そう考えていると、
「嘘だろ!?」
取り敢えず横に動いて回避しようとするも、動きがファーストステージの半分くらい遅い!
なんとか初撃は緊急回避したが、これはマズい。結構マズい。
これがANNRAKUを『絶望以下略』と言わしめる第二の理由。
普通のゲームなら敵を倒したりステージをクリアするとプレイヤーがパワーアップするか据え置きなところ、ANNRAKUではなんと弱体化してしまう! おそらく敵は順当に強くなると予想すると、差は開く一方で難易度は倍速で跳ね上がる。先が思いやられるな!
そんな余計な思考をしているのが仇になったか、僕は相手の変化を見落とした。
放物線に混じって野球のストレートのように真っ直ぐ球体を投げ付けてくる奴が現れたのだ。思考で反応が遅れ、放物線の落下予測をしていればいいと思い込み、何よりスピードがガタ落ちしている僕にそれを避けるチャンスは無かった。
「うわぁ!」
一発直撃、視界に赤くエフェクトが掛かると、思った以上の弱体化で動揺している僕にはテンポを立て直せない。次から次へと飛んで来る攻撃を眼前に迫ってから認識する程の有り様になって、
敢え無く捌き切れずに力尽きた。視界が真っ暗になる……
『CONTINUE?』
目の前の空間は暗闇で、テロップだけが浮いている。
ANNRAKUの一つ優しい点は、ゲームオーバーが無いということだ。何回力尽きても「最初から」になることはなく、直前の状態から復帰出来る。もちろんリタイアも出来るのだが、実際にリタイアした人によれば基本的に推奨しないそうだ。
さて、僕はと言えばまだ全然心も折れていないので、当然挑戦を続行する。元より退く気は毛ほども無い。
YES NOの表示は無いが、僕の脳波を読み取ったか暗闇が晴れる。
力尽きたその瞬間の場所にリスポーンした。今度は冷静に対処する。
とにかく動きを止めないこと。これで放物線が狙って当てられることは無いのであまり気にしなくていい。一発くらいなら事故だ。それよりもストレートを投げてくる連中、これを優先的に排除する。
よく見れば放物線で投げてくる奴は両手で球体を頭上に掲げ持つが、ストレートで投げる奴は片手で球体を槍投げの構えのように持っている。これが分かればより優先順位が分かり易く、『撃たれる前に撃つ』も徹底することが出来る。ファーストステージもそうだが、相手にパターンがあるゲームはこちらもパターン化してしまえば楽なもの。
そこからはトントンと進み『BOSS STAGE』のテロップと相対した。
そこにいるのはやはり道中の敵が巨大化し、コアが顔面になった『GOD:K』。相変わらずフィールドに対して圧迫感のあるサイズの敵は拳を振り上げ、
「お前も物理型かよ!」
こちら目掛けて振り下ろす。まぁこちらはしっかり見ていればなんとかなる。範囲も狭い。気をつけるべきは、
『GOD:K』がグッと腕を顔に巻き付けるように構える。そして、
回転して繰り出す横薙ぎの一撃。予備動作は大きいものの回転が早い! 僕はジャンプでなんとかこれを躱す。移動速度の影響はこっちにも出ているようで、なんというか緩慢というか、ふわりとしたジャンプになった。早めに跳んでおいてよかった。ファーストステージの感覚でやっていたら直撃だ。
しかしこれ以外のパターンは無いようだ。となればあとはしっかり集中して、無理に焦って攻めたりせずに、確実にじっくり回避と攻撃を重ねて……
オオオオオオン、と謎の呻き声を上げて『GOD:K』が腕を投げ出し天を見上げる。と同時に『STAGE CLEAR』の文字が僕を祝福する。
しかし相変わらず即座に画面が暗転し、『ステージ ヲ コウチクチュウ デス』の文字が浮かび上がる。せっかちなゲームだ。
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