STAGE1.Legs
早速ファーストステージが始まった。目の前に『STAGE1.Legs』のテロップが表示されると同時に、ロボットアニメに出て来そうなライフルを持った主人公が現れた。『ガンマライフル』とか言うらしい。
周囲を軽く見回すと、何やら景色が小さい頃父とよく遊んだ運動公園に似ている。
なるほどな。ステージを構築中ってのは単なるローディングじゃなくて、脳波を読み取るシステムを活かして本人がよりエキサイト出来るフィールドを用意する手間だったわけか。
……親父か。今の僕を見たらどう思うかな。人がせっかくの感傷に浸っていると、
目の前に複数体の、中心にコアのあるゼリーみたいな球体から脚だけ生えた敵が現れる。
はっきり言って気持ち悪い。確かにこれは『絶望のシューティング』かも知れない。絵面が。
とにかくクリアの為にも精神衛生の為にも即座に倒してしまうに限る。脳波のおかげで直感的に操作出来るのはこのゲームの良い所だ。チュートリアルなど無くともスムーズに照準を合わせ、イメージするだけで、
ズジュン! とそれっぽい効果音と共にレーザーが発射され、敵の体を貫通する。
敵は一発で膝を突くと、そのままドロリと溶けて消えていった。大した火力だ。まぁファーストステージだしそんなもんか、次の敵を照準を向けると、
そいつは一瞬で目の前まで突っ込んで来た。速い、そう思う暇も無く鋭い蹴りを入れられる。流石に痛みまでフィードバックはされないが、しっかりダメージは食らっているようで視界に赤いエフェクトが瞬く。
これがANNRAKUを『絶望のシューティング』と言わしめる第一の理由。
とにかく敵が強い。容赦無い。ゲームの敵ながら生き残る為に持てる力を振り絞って必死に抵抗して来るのだ。
「の野郎……! やるなぁ!」
僕はとにかく照準を合わせてレーザーを撃つ。シューティングは、というか基本ゲームはありとあらゆる敵を殲滅する必要は無い。レベリングでもなければスルー出来る敵はスルーしていいし、もしリソース管理があるゲームなら無用の戦闘は避けるべきまである。
だがこの敵においては別だ。このスピードなら振り切れるということは無い。つまり放置した奴が追撃して来た場合、後からスポーンした敵と合わせて数が膨れ上がり、またそれらから逃げ切れず、という負のループを起こして袋叩き、ゲームオーバーということだ。
僕はマメに一体一体敵を倒している内に、あることに気付いた。
こいつら突っ込んで来るスピードは速いが、横移動の
つまり落ち着いてやれば勝てる相手ってことだ!
それから僕は『とにかく近くにスポーンした奴から処理する』作戦でステージ攻略を進めて行った。
そして遂に……、
『CAUTION! CAUTION!』
と黄色に黒の演出が通り過ぎると相次いで
『BOSS STAGE』
と表示される。最初のボス戦だ。
リタイアした人によると、このゲームのボスは『GOD:K』という名前で、もちろん各ステージのラストにいる。
道中を突破してボスを倒してステージクリア、ANNRAKUはこの繰り返しらしい。ゲームとしては至極単純なのだ。
表示されたテロップが消えると共に動き出した『GOD:K』は、道中の雑魚敵が巨大化したような造形をしている。そもそも主人公がそんなにデカくないので精々その倍程度の雑魚敵はそんなにデカく見えなかったが、こいつはお台場の実寸再現ロボットを下から見上げたくらいのサイズ感と迫力がある。
これだけだとただの巨大化で特別なボス感が薄いかも知れないが、しっかり見上げると一つ明確な違いがある。それはゼリーみたいなコアだった部分が、スキンヘッドの男の顔に変貌しているということだ。耳があるべき場所から脚が生えている。
絶望的なビジュアルだな。
見た目だけに圧迫されて戦う前に負けてはお話にならない。僕は弱点っぽそうな顔面を狙ってレーザーを発射する。
対する『GOD:K』は、雑魚敵と違って高速で走ってくることはないようだ。まぁボス戦フィールドに対して結構デカいから距離が取れないし走られたら回避不能なのだが。
代わりに奴が繰り出してくるのは蹴りやストンピング。足が多いわけでもないので、落ち着いて見ていればなんとかなる。第二形態とかが無ければ初見でも対応出来そうだ。ただし踏まれたら一発アウトそうな足のサイズなので、相手を見上げて撃つことに気を取られ過ぎず、蹴りは爪先の方向、ストンピングは地面に落ちる影を確認して確実に攻撃の範囲を見極める。一応緊急回避はあるが無敵状態は付かないし、何よりアテにしていると油断を産むので使わない前提の立ち回りを心掛ける。
そうしてテンポ良く射撃を叩き込んで行くと……、
オオオオオオン、と謎の呻き声を上げて『GOD:K』が倒れる。と同時に『STAGE CLEAR』の文字が表示された。
どうやらファーストステージは無事クリア出来たようだ。
すると、余韻も何も無く画面が暗転し、『ステージ ヲ コウチクチュウ デス』の文字が浮かび上がった。
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