第13話 大事な宝物

ロビンは、右目から涙を流した。


「アニータ。ありがとう。愛している。」



そのまま、ロビンは私を再度抱きしめキスをしようと顔を近づけてきた。



私は嬉しかった。いろいろあったが、やっとロビンと心が通じた気がする。



その時、ヒステリックな女の声が響き渡った。



「何をしているの!ロビンの相手は私よ。」



キスを邪魔され、私はクリスティーナを睨みつける。



クリスティーナは、いつの間にか乱れている黒髪を振り回し、私に言ってきた。



「貴方みたいな貧相な女は、ロビンに相応しくないわ。侯爵夫人になるのは私なのよ!」



私は、クリスティーナに言う。



「貴方みたいな痴女を私のロビンを近づけさせる訳にはいかないわ。ここは、ガーランド公爵邸よ。ねえ、そこの貴方。その女を、家の外に捨ててください。」



私に声をかけられた男性の使用人が、クリスティーナに近づいて行く。



クリスティーナは再度叫ぶ。



「私は、アマージス男爵令嬢のクリスティーナよ。隣国の貴族令嬢に手を出すなんて!外交問題になるわよ。」



睨まれた使用人は動きを止める。



私は、同じ部屋にいる両親へ言った。



「お父様、お母様は何をしているのですか?早くこの人達を何とかしてください。せっかくロビンが迎えに来てくれたのに、、、」



父は、私を名残惜しそうにぐずぐずと見ている。最近は余裕が無くて忘れていたが、父はそういう人だ。気持ち悪い。



母は、私ににっこりと笑って言った。



「あら、私達の事は気にしないで。もうちょっと続けて頂戴。この前の新作より面白いわ。」



母は、完全に鑑賞ムードになっている。娘を鑑賞対象にするなんて信じられないが、こうなった母に何を言っても無駄だろう。



私は、残った兄に目を向けた。



兄は黙って首を横に振る。



基本的に我が家の男どもは頼りにならない。表立って母の意向に逆らおうとしない。





こうなったら、、、





私が、、






私がクリスティーナをつまみ出そうと心に決めた所に、ドアが開かれ新たな来訪者が入って来た。

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