第12話 捨てられないもの
ロビンの体が震えている事に気が付いたアニータは、ロビンを抱きしめた。
心なしかロビンの瞳は僅かに潤み、こんな状況にもかかわらずアニータはロビンに色気を感じていた。
男らしくて逞しいロビン。そのロビンが怯えている。
愛おしくて、守ってあげたくて、慰めたくて仕方がなかった。
鬼の形相のクリスティーナが言う。
「早く離れなさい!ロビン。いいのね。今私は持ってきているのよ。」
ロビンは、私を強く抱きしめて言った。
「もう俺はウンザリだ。あの時の写真にも、お前のような女に振り回されるのも、、、」
クリスティーナは持っている黒光りするバックから封筒を出してきた。
封筒の中の写真を思いっきりロビンに向かって投げつけてくる。
アニータは、ロビンに抱きしめられたまま、振り返りその光景を見た。
無数の写真には二人の少女が写っているみたいだった。
一人は黒髪でクリスティーナによく似ている。
もう一人の少女は肩まで揃えた艶のある銀髪で、表情が硬く青ざめているように見える。それでもその美しさと、辛そうな涙目が幼さの中の色気を引き立てている。
床に無数に散らばった写真の中には、キスをしている写真や、抱き着いている写真、黒髪の少女が馬乗りになっている写真があった。
キスの写真を見た時に、アニータは思い出した。
あの時と一緒だと。ロビンとクリスティーナが夜会の庭で密会をしていた時と同じポーズを取っている。
ロビンだ。私の愛するロビン。
目の前のクリスティーナに脅されているロビン。
クリスティーナに無理やりキスされて顔を顰めている少女姿のロビンが、今のロビンと重なった。
ロビンが怯えたように言った。
「アニータにだけは見せたくなかった。
アニータは俺の事を男らしいって言っただろ。
俺がこんな写真を撮られて、それに怯えていたなんて幻滅したよな。
でも、アニータの事が好きだ。愛している。
だから俺を捨てないでくれ。」
ああ、ロビンは本当に私の事が、、、、
私もロビンの事を愛している。この気持ちだけは捨てる事が出来なかった。
私は、ロビンから少し離れた。
ロビンは大きな体で、不安そうに私を見つめている。
私はロビンの両手を握り、ロビンの目を見て言う。
「ロビン。貴方の事を愛しています。
こんな写真なんて私は気にならないわ。
貴方は私にとって世界で一番素敵な男性よ。
ずっと一緒にいてください。」
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